ユーグレナ物語①

  • 98年度学会発表要旨

  • ユーグレナの写真①(著作権:萩原伸哉)
      北大(院)理・生・高分子機能学教室の紹介パンフや北大理同窓会誌を飾っているものです。
      下記の二つは解像度だけ異なります(ユーグレナの細胞周期:ブルー螢光は細胞核を示します)
      132KB  390KB

  • ユーグレナの写真②(ユーグレナの主観的昼)

    ユーグレナ物語②


    概日リズムによる細胞周期制御 四つの発見

    ○萩原伸哉、高橋正行、山岸晧彦、後藤 健

    1.北海道大学大学院理学研究科・生物科学 2.帯広畜産大学・生態系保護学講座

    概日リズムによる細胞周期制御に関する主な論争点は次の二点である。
    ①細胞分裂のタイミングは概日リズムによる制御を受けているか、
    ②24時間明暗周期による藻類の同調分裂のメカニズムに、概日リズムが関与しているか。

    ①の点については、論争の的になっていた緑藻クラミドモナスを用いた Goto & Johonson (J. Cell Biol. 129: 1061-1069, 1995) の研究によって、分裂タイミングは概日リズムによって制御されている、という形で決着がつけられた。

    ②について: アンチ概日リズム学派は、G1期に存在する光依存性の生長過程が、暗期には停止し明期にのみ進行することによって、分裂が24時間明暗周期に同調すると主張する。言い換えると、光は、藻類が生長する為の光合成にのみ必要であるとされる。

    本研究は、主に論争②を決着させるべく行われた。われわれは24時間明暗周期によって同調培養した鞭毛藻ユーグレナを用いた実験を通して次の四点を発見した。

    (い)G2期またはM期に光要求性の反応過程が存在し(これを、G2Lと表記する)、細胞分裂を完了する為にはこの過程に光照射されることが不可欠である;この光要求性は光合成とは無縁である。
    (ろ)G2Lの光感受性は概日リズムによって制御されており、主観的夜明け前後(CT20~CT02)に照射された光はG2L抑制を全く解除することは出来ないが、主観的黄昏前後(CT08~CT14)の光はG2L抑制を大幅に解除する。
    (は)細胞分裂のタイミングを制御する概日リズムは、24時間明暗周期の下でも確かに動いている。
    (に)G2期またはM期に概日チェックポイント(G2Cと表記)が存在し、主観的夜にならないと、このG2C抑制は解除されない。

    発見(い)(ろ)(は)により、アンチ概日リズム学派の仮説は完璧に否定される。また、概日リズム学派による同調分裂メカニズムの説明も(い)と(ろ)を組み込んだ説明に修正する必要がある。概日リズムによる細胞分裂のタイミング制御について、初めてそのメカニズムを明らかにしたのが発見(に)である。

    以上、1998年度 日本時間生物学会学術大会講演要旨

    なお、概日リズムによる細胞周期調節については、③概日リズムと細胞周期を、また同調分裂のしくみに関する研究の歴史(概観)については、「生命とリズム」談話室を御参照下さい。

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    ユーグレナの細胞分裂周期の概日制御

    (萩原伸哉、 後藤健;北大・理・生物、帯畜大・教養・生物)

    単細胞生物からヒトまで様々な生物の細胞分裂のタイミングは概日リズムを示す。単細胞藻類 ユーグレナ(ミドリムシ)において細胞分裂が1日の特定の時間(主観的夜又は、光合成能がより低くなる時期)にのみ起こり、その残り半分の時間(主観的昼)には起こらない事が知られている。

    そこで、私たちはそのようなタイミングがどのように制御されているかを、初めて報告する。

    私たちは、LD:1、1サイクル、25℃の条件下で、26時間の自由継続周期を示して分裂をしている培養を用いて実験した。フローサイトメトリーにより、3日間、2時間毎に個々の細胞中のDNA含量を測定し、主観的昼の間(13時間)S,G2/M期の細胞集団がその場に止められた状態にあることを見出した。細胞がサーカデイアン制御下にない時、 S期とG2/M期の進行に必要な時間はそれぞれ3時間であるので、概日リズムが主観的昼の間、これら2個所の進行を止めているので、私たちは、主観的夜の間のみ細胞分裂が起こると結論づける。

    以上、1998年度 日本植物生理学会年会講演要旨


    (since 02/19/99)