@力学的時間から見た哺乳類の限界寿命
アロメトリ指数が四分の一に近いので、この関係を四分の一乗則と呼びます。ただし、哺乳類の限界寿命の場合には、顕著な例外を含む四分の一乗則であることをお忘れなく。
A力学的時間から見た哺乳類の代謝テンポ
なお、テンポそのものを変量としてアロメトリを表現すると、例えば、固有仕事率(固有代謝率)について次式が与えられています。
1 kcal/day = 0.0484 W (ワット=J/s)ですから、上式をW表示にすると、
B代謝テンポから見た代謝テンポ
哺乳類では、種にかかわらず、呼吸周期は心拍周期の約4倍です。つまり、一呼吸する間に心臓は四度ほど打つのです。
哺乳類の場合、一呼吸する間に体重1g(または60kg)当たり0.2μL(または12mL)の酸素を消費することになります。
上述のように、哺乳類の固有代謝率はP*(W/kg) ≒ 3.4 M-0.25です。スズメ目は哺乳類の約2倍の固有代謝率(代謝テンポ)をもつようですが、スズメ目以外の鳥ですと哺乳類とほぼ同じ代謝テンポですね。以上のことから、鳥はゆっくりと呼吸する割には、一呼吸あたりのエネルギー消費は哺乳類に比べ大きいことがわかります。また、代謝テンポからみた呼吸テンポを両者で比較すれば、鳥の方が3倍近くも遅い、ということでもあります。
C代謝テンポから見た限界寿命
D代謝テンポを巡る諸問題
Da. 代謝余裕
上述の代謝テンポや固有代謝率は安静時のものでした。これと、その動物が発揮できる「最高」の固有代謝率とは異なります。が、哺乳類では一般に、安静時固有代謝率の約10倍まで固有代謝率を上げることができます。この比率のことを代謝余裕と呼びます。
最高固有代謝率 Vmax(O2)*=1.94M-0.21 (ml O2/s/kg)=39M-0.25 (W/kg)
安静時固有代謝率 Vstd(O2)*=0.188M-0.25 (ml O2/s/kg)=3.8M-0.25 (W/kg)
哺乳類の代謝余裕:Vmax(O2)*/Vstd(O2)*≒10
Db. 耐久時間
外部からの栄養補給なしに生命をどれだけの時間維持できるのか、つまり「耐久時間」は体内に貯蔵する脂肪が消費し尽くされるまでの期間です。脂肪率はサイズに関わらず殆ど同じなので、耐久時間は代謝率がが高いほど短くなります。すなわち、
耐久時間=備蓄脂肪量/代謝率∝M/M0.75=M0.25
つまり、耐久時間は代謝テンポとまったく同じように四分の一乗則にしたがって延びます。言い換えると、小型の動物ほど年がら年中食べていないと餓死する危険にある、ということです。また、大型の動物は備蓄脂肪だけで長期間生存できます。クマは、代謝率や体温を下げることなく冬眠できますし、クジラは季節ごとにその採餌地で餌を補給したあと、ほとんど餌をとることなく外洋の旅を長いこと続けることができます。
Dc. 筋肉の最大パワー
ここでのパワー(仕事率)は、筋肉が「外に対して行う」仕事の仕事率のことです。これは、筋肉のもう一つの仕事率、つまり代謝率と密接に関係していますが、代謝率そのものではありません。代謝率の方は筋肉が消費するエネルギーの消費速度(変換速度)を表していますが、その消費エネルギーの約50%が「外に対して行われる仕事」に変換するからです:エネルギー効率は50%ということです。生物のエネルギー変換で述べたように、生体内ではATP生産効率が約50%、ATP消費効率が約50%なので、生物としての(全体の)エネルギー効率は約25%なのです。
さて、筋肉としてのエネルギー効率は約50%ですから、筋肉が「外に対して行う」仕事の仕事率は、筋肉の代謝率の約半分ということになります。代謝率は四分の三乗則にしたがって大きくなりますから、筋肉が「外に対して行う」仕事の仕事率も同様に四分の三乗則にしたがって大きくなります。全く同じように、同じ大きさの筋肉(単位体積あたりの筋肉)が「外に対して行う」仕事の仕事率、つまり固有仕事率はサイズが大きくなるにつれ四分の一乗則にしたがって小さくなります。テンポの側面から見れば、サイズが大きくなるにつれ四分の一乗則にしたがって遅くなる、ということです。
以上を「仕事量」(単位体積の筋肉が外に対して行う仕事の総量)としてとらえると、サイズによらずほぼ一定という事実が導かれます。なります。というのは、仕事量(J)=仕事率(J/s)×収縮時間(s)ですが、サイズが大きくなるにつれ「仕事率」は四分の一乗則に応じて小さくなるのに対して(一回の収縮に要する)「収縮時間」の方は逆に四分の一乗則に応じて大きく(遅く)なるからです。
「仕事量」のこの不変性は、メカニズム的には筋肉要素の哺乳類的普遍性に由来しています。
Dd. 概日リズム
深部体温が概日リズム(⇒生物リズム学概論 科目序論)
を示すことはよく知られています。全く安静にしていても(実際に活動するかしないかに関わらず)活動期(α期)は休息期(ρ期)よりも高い体温を示します(ヒトで最も注意力が鈍る「危険な」状態は明け方の最低体温のときです)。
全く同じように、固有代謝率もα期(昼行性の動物であれば昼、夜行性の動物であれば夜)の方がρ期よりも高くなるような概日リズムを示します。アショフたちが鳥類で調べたところ、スズメ目でもそれ以外でもα期の固有代謝率はρ期より25%ほど高いようです。哺乳類ではどれほど高いのでしょうか?
面白いことに熱コンダクタンスもα期に高まるような概日リズムを示します。
哺乳類もスズメ目の鳥もα期の熱コンダクタンスはρ期の約1.5倍、スズメ目以外の鳥では約2倍になります。活発な活動に伴って発生する熱を逃がしやすくしている、ということなのでしょう。
なお、固有熱コンダクタンス(単位体重あたりの熱コンダクタンス)C*はサイズの約0.5乗に比例して減少します。また、単位体重あたりの体表面積S*はサイズの三分の一乗に比例して減少します(S∝L2、M∝L3より、S*=S/M∝L−1=M−0.33)。この二つの効果はともに、大型の動物の方が熱損失を防ぐ上で有利であることを示しています。
哺乳類は限界寿命の間に、約2億回の呼吸を行うことが分かります。ただし、コウモリや霊長類はサイズの割に限界寿命が顕著に長いのですから、限界寿命中における呼吸回転数もずっと多くなります。
110 × (365 × 24 × 60) × 15 ≒ 8 × 108 回転数/(限界寿命)となります。
同じようにして、哺乳類は限界寿命の間に約8億回、心拍を打ちます。やはり、コウモリや霊長類はこれよりずっと多くの心拍数を打つわけです。
統合・基礎神経学(北大)
The Cytoskeleton (Molecular Biology of the Cell)
Myosin and Actin - Background in Microbiology(Stephan M. Altmann)
Actin Myosin Crossbridge 3D Animation(http://www.sci.sdsu.edu/class/bio590/)