論文発表

2018.05.27
新たなネズミマラリア原虫遺伝子変異体の作製方法を開発しました。

平成30年5月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/ 29774536

マラリアは蚊によって媒介される世界最大規模の感染症で年間50万人以上の命を奪っており、 抜本的な対策法の確立が求められています。このような研究ではどのように感染が成立するのか、 遺伝子レベルでの解明が求められます。そこで、ヒトへの病原性を持たないネズミマラリア原虫をモデルとして用い、 標遺伝子機能を調べることが一般的です。しかし、従来の遺伝子組換え体の作製法は効率が悪く、 その結果として多くの時間・費用がかかることが研究進展のネックになっていました。 そこで本研究ではこの問題を解決するため、効率的な遺伝子組換えネズミマラリア原虫作製法の開発を試みました。 その結果、抗生物質であるブラストサイジンとその耐性遺伝子であるbsdを用いて遺伝子組換え原虫を作製可能な新たな 実験系を開発することに成功しました。今回確立した方法により、ネズミマラリア原虫において独立した薬剤マーカーにより、 最大4遺伝子を同時に破壊することが可能となりました。今後、この本法を用いた様々な解析により、 新たな治療薬・ワクチン開発にむけた研究の進展が期待されます。
本論文発表は日本学術振興会科学研究費補助金の支援を受けて実施されました。

Development of a bsd-blasticidin selection system in Plasmodium berghei.
Soga A, Ko-Ketsu M, Fukumoto S.
FEBS Lett. 2018 Jun;592(11):1847-1855. doi: 10.1002/1873-3468.13100. Epub 2018 May 27

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2018.04.23
犬バベシア原虫の遺伝子組換え方法を確立しました。

平成30年4月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29685172

マダニに媒介される赤血球内寄生原虫であるバベシア属には約100種類同定されていますが、 牛に寄生する3種類(Babesia bovis、B. bigemina、B. ovata)のみについて遺伝子組換え方法が確立されていました。 他のバベシア原虫についても同方法の導入が求められています。 そこで、日本を含むアジア地域で犬に広範に流行し、ペット産業に深刻な被害を与えている、イヌバベシア原虫(B. gibsoni) について遺伝子組換え方法の確立を試みました。ゲノムの標的部位に外来遺伝子を導入し、安定発現を実現するために、 ef-1a遺伝子の上流と下流ゲノム断片を発現ユニット (ef-1αプロモーター:GFP ORF:ターミネーター:actinプロモーター:dhfr ORF:ef-1αターミネーター) の両側にもつプラスミドを構築し、虫体に導入した後に、薬剤選択を行ったところ、 相同組換えによりGFP遺伝子とdhfr遺伝子が標的ゲノム部位に組み込まれた組換え虫体の作製に成功しました。 また、標的部位のef-1α遺伝子がノックアウト(KO)されたことも確認しました。 今回確立した方法により、イヌバベシア原虫に外来遺伝子を自在に導入でき、 また、標的遺伝子を簡単にKOすることができるようになりました。 今後、イヌバベシア原虫の病原性遺伝子の特定・KOによる虫体の弱毒化と、 この弱毒化虫体をベクターとした新規組換えワクチン開発への応用が期待されます。
本論文の筆頭著者である劉明明君(大学院生)はこれらの研究成果により第9回日本獣医寄生虫学会奨励賞の受賞が決定しました。 なお、本研究はJSPS拠点形成事業(アジア・アフリカ学術基盤形成型)の支援を受けて実施されました。

Establishment of a stable transfection system for genetic manipulation of Babesia gibsoni.
Liu M, Adjou Moumouni PF, Asada M, Hakimi H, Masatani T, Vudriko P, Lee SH, Kawazu SI, Yamagishi J, Xuan X.
Parasit Vectors. 2018 Apr 23;11(1):260.

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2018.03.01
ピロプラズマ病に対する新たな薬剤開発

平成30年4月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29499568

ピロプラズマ病は、バベシアおよびタイレリアがマダニによって動物に媒介され、赤血球に寄生することにより、 発熱、貧血、血色素尿症を引き起こす難治性の原虫病です。ピロプラズマ病は世界的に分布し、 畜産業に大きな経済的被害を与える他、人にも感染することが知られ、人獣共通感染症としても重要です。 しかし、現在使用されている治療薬は副作用が強く、治療を受けた動物でも再発することが報告されています。 そのため、原虫を殺滅する効果と安全性が高い薬剤の開発が喫緊の課題です。 本研究では、熱ヒートショック蛋白質90阻害剤(17-DMAG)のバベシアとタイレリアに対する増殖抑制効果について検討を行いました。 その結果、17-DMAG は、牛バベシア(B. bovis, B. bigemina, B. divergens)、馬ピロプラズマ(B. caballi, T. equi)に対して 高い増殖抑効果対を有することが明らかになりました。また、B. microti感染マウスに17-DMAG 30 mg/kgを投与すると、 優れた治療効果が認められた。さらに、また、現在ピロプラズマ治療薬として使用されているジミナゼン・アセチューレートと17-DMAGを 併用すると、それぞれの投薬量を半分にしても、十分な治療効果が得られました。今後の研究により、17-DMAG は、 家畜のピロプラズマ病の新たな治療薬として実用化されるばかりでなく、現在人バベシア病の治療に用いられている薬剤との新しい 併用治療法としても期待されます。本論文の発表は日本学術振興会科学研究費補助金の支援を受けて実施されました。

17-DMAG inhibits the multiplication of several Babesia species and Theileria equi on in vitro cultures, and Babesia microti in mice.
Guswanto A, Nugraha AB, Tuvshintulga B, Tayebwa DS, Rizk MA, Batiha GE, Gantuya S, Sivakumar T, Yokoyama N, Igarashi I.
Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2018 Apr;8(1):104-111. doi: 10.1016/j.ijpddr.2018.02.005. Epub 2018 Mar 1.

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2017.02.06
トキソプラズマに対する免疫応答がうつ様症状の発症を誘導することを明らかにしました。

平成29年1月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28138019
細胞内寄生原虫のトキソプラズマの感染は、ヒトにおける精神疾患の発症に関与することが考えられています。 我々の研究室では、トキソプラズマ感染がうつ様症状の発症を引き起こすことをマウス実験モデルで明らかにしています (Mahmoud et al., Behav Brain Res. 2016)
今回の研究では、 トキソプラズマに対する免疫応答がうつ様症状の発症を誘導することを明らかにしました。 トキソプラズマに対する防御免疫反応には、炎症性サイトカインのインターフェロン・ガンマ(IFN-γ)が必要です。 トキソプラズマ感染により、IFN-γが細胞に作用することでインドールアミン酸素添加酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase: IDO)が活性化され、 トリプトファンの代謝が亢進してキヌレニンが産生されることを確認しました。 キヌレニンはうつ病をはじめ様々な精神疾患全般の原因として考えられています。 トキソプラズマ感染は上記の経路を誘導し、宿主動物にうつ様症状が発症すると示唆されました。 さらに、このうつ様症状は抗炎症剤やIDO阻害薬で抑えることができました。 宿主免疫応答は病原体の排除に重要ですが、その副反応の一つとして精神疾患の発症に関与することに注意しなければならないと考えられます。
本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、挑戦的萌芽研究(文部科学省:15K15118)の研究成果です。

Mahmoud ME, Fereig R, Nishikawa Y*. Involvement of host defense mechanisms against Toxoplasma gondii infection in anhedonic and despair-like behaviors in mice. Infect Immun. 2017 Jan 30. PMID: 28138019. *Corresponding author

原虫病研究センター 准教授 西川 義文 (西川研HP)
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2016.08.08
トキソプラズマ感染による宿主動物の行動変化のしくみを解明

原虫病研究センター 准教授 西川 義文 (西川研HP)、日本学術振興会特別研究員(DC1) 猪原 史成らの研究グループは、病原性寄生虫トキソプラズマの感染により宿主動物の記憶に障害が生じることを明らかにしました。
≫プレス発表 (新聞記事:十勝毎日新聞20160828)

Toxoplasma gondii Infection in Mice Impairs Long-Term Fear Memory Consolidation Through Dysfunction of the Cortex and Amygdala.

Ihara F, Nishimura M, Muroi Y, Mahmoud ME, Yokoyama N, Nagamune K, Nishikawa Y. Toxoplasma gondii Infection in Mice Impairs Long-Term Fear Memory Consolidation Through Dysfunction of the Cortex and Amygdala. Infect Immun. 2016 Jul 25. pii: IAI.00217-16. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 27456832.

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2016.05.12
原虫病研究センター・国際連携協力部門・国際監視学分野・菅沼啓輔特任助教らが研究成果を発表しました。

家畜トリパノソーマ症の治療薬は種類が限られるとともに、薬剤抵抗性のトリパノソーマ症が各国で報告されているため、新規治療薬の開発が求められています。本研究では、核酸合成酵素の一種であるInosine Monophosphate Dehydrogenase(IMPDH)阻害薬であるミコフェノール酸とその誘導体の抗トリパノソーマ活性を検討しました。その結果、薬剤標的酵素であるTrypanosoma congolense IMPDHが同定されました。さらに、試験管内抗トリパノソーマ活性評価系を用いた試験から、ミコフェノール酸とその誘導体が新規トリパノソーマ治療薬のリード化合物になりうること示唆されました。

Mycophenolic Acid and Its Derivatives as Potential Chemotherapeutic Agents Targeting Inosine Monophosphate Dehydrogenase in Trypanosoma congolense

Keisuke Suganuma, Albertus Eka Yudistira Sarwono, Shinya Mitsuhashi, Marcin Jąkalski, Tadashi Okada, Molefe Nthatisi, Junya Yamagishi, Makoto Ubukata, and Noboru Inoue. Antimicrobial Agents and Chemotherapy. 2016, May 2 online, doi:10.1128/AAC.02816-15. PubMed PMID: 27139487.


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2016.03.15
原虫病研究センター・感染免疫部門・生体防御学分野・西川義文研究室が研究成果を発表しました。

ネオスポラはイヌやウシなどに感染し神経障害の原因となる病原性原虫ですが、その病態発症メカニズムは分かっていません。今回、ネオスポラのマウス感染モデルを用い、感染による脳組織の変化を解析しました。その結果、炎症反応に伴う脳病変、神経伝達物質量の異常、神経細胞の活性低下が明らかとなりました。本研究により、ネオスポラの感染による中枢神経の機能障害が生じていることが示唆されました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、挑戦的萌芽研究(文部科学省:15K15118)、特別研究員奨励費(日本学術振興会:15J03171)の研究成果です。

Changes in neurotransmitter levels and expression of immediate early genes in brain of mice infected with Neospora caninum.

Ihara F, Nishimura M, Muroi Y, Furuoka H, Yokoyama N, Nishikawa Y. Changes in neurotransmitter levels and expression of immediate early genes in brain of mice infected with Neospora caninum. Sci Rep. 2016 Mar 14;6:23052. doi: 10.1038/srep23052. PubMed PMID: 26971577.

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2016.03.10
原虫病研究センター・診断治療研究部門・高度診断学分野・五十嵐郁男研究室が研究成果を発表しました。

バベシアとタイレリアは赤血球に寄生し、家畜に大きな経済的被害を与えているため、安全で治療効果の高い薬剤の開発が求められています。本研究では、ハンセン病の治療薬であるクロファジミンの両原虫感染に対する治療効果について検討を行いました。その結果、クロファジミンは培養原虫に対して優れた増殖抑制効果を示しました。更に、マウスを用いた治療実験により、高い治療効果が認められました。今後の研究により、家畜のピロプラズマ病の新たな治療薬として実用化される事が期待されます。

Clofazimine inhibits the growth of Babesia and Theileria parasites in vitro and in vivo.

Tuvshintulga Bumduuren, AbouLaila Mahmoud, Davaasuren Batdorj, Ishiyama Aki, Sivakumar Thillaiampalam, Yokoyama Naoaki, Iwatsuki Masato, Otoguro Kazuhiko, Ōmura Satoshi and Igarashi Ikuo., Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2016 Feb 16. pii: AAC.01614-15. [Epub ahead of print]


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