クルマ社会と子どもたち

(1998.12)
クルマ社会の異常さとは何か(一部以下に掲載)
道はなぜ大切なのか
交通事故への異常な対応
変わるべきは道路環境

クルマ社会の異常さとは何か

 北海道のある地域では、いまでもまれに人家付近に熊(ひぐま)が出没することがあります。ヒグマは危険です。もともと雑食ですが、家畜を襲うことがあるのです。攻撃性にも富んでいます。だから、ヒグマがひとたび目撃されると、今後に起こりうる人身被害を防ぐために、ハンターが何人もくりだすのが普通です。
 ところで、もし熊が、日本全国で毎年五〇〇人以上の子どもを食い殺すとしましょう。ケガを負わされて何針も縫い、あるいは傷の痛みに号泣する子どもたちが、毎年七万人にものぼるとしましょう。そうしたらどうなるでしょうか。大パニックが起こると思います。大人たちは、熊を退治するために血まなこになるでしょう。金に糸目もつけずに、必要なら家財を投げうっても、わが子を思って熊退治のために奔走すると思うのです。ありがたいですね。それが親というものです。いえ、そもそも大人なら他人の子といえども、その幼い命を守ろうと奔走すると思うのです。
 でも、私たちの社会はどうなっているのでしょうか。毎年五〇〇人もの子どもたちが、クマならぬクルマによってひき殺され、七万人もの子どもたちがケガを負わされているというのに、大人たちはまったくそ知らぬ顔なのです。たしかに「ク(ル)マに気をつけろ」とはいいます。あるいはク(ル)マが危害を加えないように、子どもに黄色いランドセルを背負わせたりします。でも、ク(ル)マを捕獲するために、何の努力もしないのです。そればかりか、あれこれと理由をつけては自ら頻繁にクルマを走らせ、かえって子どもたちに多大の危険と、甚大な被害を与えているのです。