研究内容

植物の体細胞からの胚形成に関する研究(増田、得字)

 植物は胚発生過程を経て種子を作りますが、この過程で基本的な体のパターンをつくります。そして発芽後、茎の先端の頂芽分裂組織から葉や茎、花などの地上部の器官を次々と作りだします。私たちは植物の最も初期の体作りである胚形成のメカニズムを明らかにすることを目的に、そのモデルとしてニンジン体細胞胚を材料に研究をおこなっています。今までに、胚形成に伴って発現する遺伝子や蛋白質を同定しており、これらの構造・機能から胚形成を制御している分子の実体に迫ることを目指しています。

 また、動物細胞とは異なり、植物細胞は一旦様々な組織の細胞へと特殊化(分化)した体細胞から植物個体を再生する能力を持っています。これを「分化全能性」といい、ニンジン体細胞胚形成はこの典型的な例として、研究されてきました。しかし、体細胞が胚的な細胞に転換するメカニズムについてわかっていることは多くありません。私たちは、従来のカルスから胚を形成させる方法とは異なる、ニンジン表皮細胞が直接胚へと分化する新しい実験系を確立しました。この系を用いて形態学、生化学、生理学、分子生物学など様々なアプローチから、体細胞から胚形成細胞への転換機構を明らかにすることを目的に研究を行っています。この転換メカニズムが解明されると、植物のクローン技術への応用が期待され、有用作物品種の育種や絶滅危惧植物の保護にも役立つと考えています。


ニンジン表皮細胞から再生した胚

微生物機能の利用・開発に関する研究(大和田)

 私たちは土壌微生物を利用し、作物の効率的な生産力の向上を目的としています。研究内容は、善玉の土壌微生物(根粒菌)を改良・利用して宿主のマメ類の生産力向上を計る研究と、悪玉の土壌微生物(土壌病原菌)による植物病害の微生物による防除(生物防除)の研究にわかれています。

 根粒菌はマメ類と共生する過程で根に瘤(根粒)を形成し大気中の窒素ガスをアンモニアとし、”肥料”として作物に供給します(生物窒素固定)。化学肥料は化石エネルギーの大量消費と環境汚染を伴いますが、根粒菌は環境に優しいクリーンなエネルギーを提供します。私たちは根粒菌一般の増殖抑制作用とともに、宿主根粒菌の相性の決定と根粒形成過程に重要なアミノ化合物を宿主細胞及びその分泌液中に見い出しています。また、根粒中で発生しやすく組織・細胞に害を与える過酸化物の除去能力を高めるため、遺伝子操作により過酸化物除去酵素の高発現株を根粒菌で構築しています。更に、根粒菌の感染・侵入時に強い浸透圧ストレスを受けるため、これに対する適応能力や、宿主の根部への付着能力の改良を根粒菌の側から行っています。

 一方、植物病害の防除に使われる化学農薬には残留毒性の問題がありますが、微生物を用いる生物防除法は環境に優しく、且つ低コストです。私たちは、コンポスト(堆肥)から植物病原菌の増殖を強く抑制する微生物(拮抗菌)を単離し、植物病害に対して有為な抑制効果を認めています。実用的な生物防除系の確立と抗菌化合物の同定、及び関連遺伝子のクローニングを行っています。 私たちは食糧基地北海道・十勝にあって、微生物のクリーンエネルギーによるマメ類の生産力向上と、微生物農薬による植物病害の防除を行い、環境にやさしい農業の推進を目指しています。


アズキに形成された根粒