派遣学生による実習記録

乳質班 派遣した学生隊員

大岡秀雄隊員
獣医学科1年

短期派遣ボランティアの実習記
   〜乳質班〜

1.派遣を終えて

3週間という短期間に、実に大変多くの事を学ぶ事が出来ました。今も国際協力について勉強し、協力隊の方々と連絡を取り、様々な国での活動や感じている疑問を教えて頂き、農畜産に対する一層幅広い基礎知識を獲得するべく努めています。即ち今でも派遣で与えて頂いたものを懸命に整理している状況ですが、これら自分の姿勢の変化は派遣において得られた直接の結果であると思っています。豊かな知識と経験を得る機会を与えて頂いた事に対する感謝とともに、ここであらためて自分が派遣で得たものとその過程を簡単に整理してみたいと思います。

まず、実際に見たフィリピンの酪農に関してですが、文字通り先進国の標準酪農がそのまま通用するわけではない(全くではないでしょうが)という事を知りました。もっと言えば、酪農は、地域ごとに固有の発展が欠かせない事が分かりました。即ち、経済状況や農業副産物・植生・気候・風土病等の条件に合った育種と食文化の変化を含んだその国固有の総合的な酪農システムを構築しなければならないという事を理解しました。

今思えば当然の事のようですが、これには、1〜400頭規模の様々な頭数と、そのようなレベルの差のある酪農現場を見学し、研究者またボランティアとして働いている方々の酪農発展への取り組み方、自然環境、産業発展と各組織の経営状況、国が力を入れる理由等を知る事が不可欠ではないかと思います。少なくとも、私にとっては、時々に疑問をぶつけ、悩み、少しずつ視野を広げていく事が必要でした。このような各国の多様な事情について、ただ一つの国で学んでいてはなかなか分からないのではないかと思います。

さらに、このような事は、他の国際協力分野にもあてはまる事であると思います。発展の図り方は、一様ではなく、その国その国で広い視野をもって行わねばならない事であり、従って、たとえ、ある一部分の協力であっても、大変高度な関わり方が要求されるのだと思います。

一方、派遣の間、ボランティアとは何か、どういう働き方をすべきものか、どのように役立っているのかについてよく考えなさいと言われていました。しかし、この事については未だにしっかりとした答えを掴めないでいます。派遣され、そこで触れ、また感じた、現地に溶け込んでいく独特な仕事の方法と、一つでも成せばよいという成果の捉え方との違和感がまだ残っています。ボランティアの存在意義に対して感じた疑問をずっと持ち続ける事が大切だ、とも強く言われました。そのため国際協力について更に学び続けていく必要があろうかと思います。

最後に、大人数の家族を大切にし、冗談好きで人懐こいオープンな心を持ち、シンプルな喜びを大切にする、のんびりとした生き方について、特に、取り上げたく思います。私にとって、英語が通じ、容易に人を受け入れてくれるフィリピンが最初の外国だという事は、とても幸運でした。実際に活動を始め、そう思いました。他の文化の国では、短期間にこれだけの事を学ぶ事も、相手国の役に立つ事も、非常に難しかったに違いないと思いますし、間違いなく活動は、非常に苦労したと思います。現代の日本とは全く異なる生活を無事に体験できたのは、いつも暖かく、陽気に接してくださった全ての方々のおかげであると改めて感謝します。

 

2.派遣の概要

我々は、フィリピン大の研究所、国家酪農局、青年海外協力隊が推進している「フィリピン国酪農開発強化プロジェクト」(以下、プロジェクト)への短期派遣による側面支援として派遣されました。プロジェクトの目的は、フィリピンの酪農を振興させることです。そのフィリピン酪農の現状は、かんばしくはありません。自給率が極度に低く、輸入した粉ミルク、成分混合ミルクがほとんどという状況にあります。しかし、1998年の外資系外食産業の参入により、現地生産のフレッシュミルクへの需要が生まれ、拡大しています。

このような中で、我々乳質班の活動は、乳房炎対策、及び工場衛生調査により、フィリピンの乳品質の向上に貢献する事でした。そのために、約20ヶ所の農家見学・4ヶ所での搾乳見学・3ヶ所での乳質検査・3ヶ所の乳製品工場見学などの活動を行いましたが、私は、工場製品化過程の調査活動について記述します。

 

3.活動内容(1)

我々はフィリピン大学、付近の2次組合、少し離れたバタンガス州、にある3つの乳製品工場を見学し、衛生状況、乳質管理の方法、輸送方等について調べました。下が訪れた工場の写真です。

はじめに、大学および組合の工場についてですが、機器・施設は清潔でした。が、搬入ミルクの検査法、衛生的作業法、製品の温度管理についての改善点を最終報告としてフィリピン側に伝えました。具体的に見ます。これがその時のスライドです。

MBR testDensity test Acidity test

others

・Alcohol precipitation test

・Clot on boiling test

Ecomilk test    

このような乳質テストを行う際、器具の洗浄、手袋の使用について、また、作業中の服装、製品への接触、温度管理について伝えました。

次にバタンガス州の工場についてです。この工場は、スターバックスにフレッシュミルクの90%以上を卸しており、その関係で国際安全規格のHACCPを取得していました。他の二つの工場とは、衛生・品質管理の面で一線を画していました。そのような違いとともに、2年以内になしとげられた工場の変化の経緯と、他の工場も強い圧力下で大きく変化できるのではないか、という事について報告しました。

・testing quality many times

 

・strict temperature management

(rejectover7℃)

 

・etc

品質検査は9倍の回数、温度管理はトラックドライバーまでが行うという徹底ぶりでした。これらをふまえた我々の乳質向上についての結論は、「主な乳質低下は、農家での生産レベルで起こっており、それは製品化の過程で回復できるものではなく、従って、(製品化過程にも課題はあるものの、)農家での乳質向上により力を入れる必要がある」というものでした。

 
4.活動内容(2)

次に仕事の様子について報告します。これは仕事初日の活動内容です。

(1)オフィスで自己紹介&プロジェクトの説明

(2)大学乳製品工場見学

(3)近くの組合乳製品工場で組合の説明

(4)別の組合で濃厚飼料作りの見学&飼料状況、未利用資源利用の説明

(5)大学で午後搾乳見学

(6)大学の育種用雄牛の見学と説明

(7)ステイ先へ帰り、ジン回し飲みで交流 

滞在全日程を通して、乳質にとどまらない幅広い活動内容を与えて頂きました。このようにして得られる広い視野でフィリピン固有の酪農を理解する事は、乳質班として活動する上で、非常に重要な事でした。写真はその活動例です。濃厚飼料工場、原始的な手搾り搾乳、乳脂肪率9%の水牛の農場、すでに大きく育った牛に対する除角、妊娠鑑定への同行、製品普及の試みと試飲、同じ工場の飼料を用いた豚の農場です。

 
濃厚飼料プラント 大学水牛農場 手搾り

製品試飲 豚の農場 濃厚飼料プラント内部

 

除 角 妊娠鑑定
 

 

 
5.休日
 

休日の様子について、いくつか紹介します。最終発表後、引場さん所属のランドクルーザークラブでジャングルへ行きました。村を抜け川沿いでキャンプし、滝に打たれて来ました。

 
 

下の写真は、カウンターパートのオリーブさんのお子さんの誕生パーティーです。フィリピンでは子供が育ちにくかった時代の名残りで、1歳の誕生日を特別に祝います。大変盛大でした。

 

その他、ステイ先の方々との充実した交流を持つ事ができました。豊かなトロピカルフルーツも乾季の分は制覇できました。

Dinner with

Olivesans family
Drinking coconutjuice

Night with lambanog

Try Halo-halo in the village

 

6.国際ボランティア

最後に、現地でふれた国際ボランティアの仕事について学んだ事を報告します。一言で言うと、非常に独特な仕事の様子でした。ボランティアの方は必ず現地の言葉で話されます。英語はほとんど使いません。原則として一人で任地に送りこまれるそうです。ただ、フィリピンではプロジェクトとして例外的に複数の隊員が協力していました。人間関係を大切にし、現地の人々にとけこんでいく事を非常に重視します。自分の専門でない事も幅広く扱います。自分の仕事の意義ややり方について、例外なく真剣に考えておられました。肉体的、精神的にタフな仕事を、非常に献身的になさっていました。写真はフィリピンでお世話になった現役協力隊員の方々です。夜遅くまで話し、たくさんの事を教えられ、またとても助けて頂きました。

引場シニア 協力隊の方々

 

7.終わりに

今回の派遣のためにお世話になった全ての方に感謝いたします。今後、派遣で得たものを活かして行きたいと考えています。どうもありがとうございました。

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