派遣学生による実習記録

乳質班 派遣した学生隊員

佐藤あかね隊員
サブリーダー
獣医学科5年
太田奈保美隊員
獣医学科3年

JICA海外実習「フィリピン酪農開発プロジェクト」実習記

質班 V5 佐藤あかね

V3 太田奈保美

はじめに

行く前、絶対に不安になるだろうと思われる生活面のこと、そして実際にどのような活動を行ったかを中心に、写真を交えて書こうと思います。この実習記が今後JICA実習に参加する方の参考になればと思います。

【生活面】
・衣

現地で温度計を一度も見なかったため、正確な気温はわかりませんが、一日中、暑いです。Tシャツとハーフパンツで過ごせます。しかし、肌を露出していると蚊に刺されますので、虫除けスプレーやクリームが必需品となります。 現地では、蚊が媒介するデング熱やマラリアが流行しているそうで、用心するにこしたことはないと思います(スプレーは空港の荷物検査でひっかかることがあるそうです。私は大丈夫でしたが)。夜は蚊帳を用意してくれましたが、ドアと窓を閉めていればスプレーでなんとかなります。また、フィリピンは陽射しが強いので日焼け止めや帽子もあったほうがいいと思います。

・食

食事は、ホームステイ先によって異なりますが、私たちが滞在したKKMIでは朝、昼、晩と私たちの面倒を見てくれた、機械メンテナンスの人が作ってくれたり、近くの惣菜屋のようなところで買ってきてくれるなどして、準備してくれました。日によっては、トライシクルに乗せてもらって、惣菜屋に行き、自分たちで好きなおかずを選ぶことが出来ました。この店では、一皿15ペソ(1ペソ約2円)でした。 また、お昼は、UPの学食で食べることもありました。現地には、マクドナルドやケンタッキー、ジョリビーなどファーストフードのお店もいろいろありますので、いざとなったら何でも食べる事が出来ます。主食は、パンがでることもありましたが、大抵はご飯です。 日本のお米に比べ、パラパラしていますが、汁気のあるおかずと混ぜて食べることが多いため、おいしく食べられます。 向こうでの食事は、炭水化物とたんぱく質が主でした。野菜をあまり食べないようです。味付けは、濃い目ですが、慣れればあまり気にならなくなります。 食材は日本で見かけないものも多数出てきますが、自分のお腹がこわれないと思う範囲で挑戦すればいいと思います。意外とおいしいものがたくさんあります。 フィリピンは、熱帯だけあって、フルーツが豊富です。 KKMIのそばにはたくさんのフルーツがなっていて、新鮮なものもたくさん食べました。やはりとりたてが一番で、道端の店で買うよりもずっと美味しいです。 KKMIでの食事をするスペースは、外にありました。板で作られたテーブルと椅子があり、食材には、日本では考えられないほどのハエがたかりました。しかし、これも慣れてしまえば平気になり、外で食べるのも気持ちがいいものでした。

←食事スペース・テーブルの上の果物はランブータン

飲料水ですが、ミネラルウォーターを携帯して、水道水は、飲まないようにしました。小さいペットボトルで買うよりも、1ガロンの大きいボトルで買ったほうがお得です。

シニガンスープ マランという果物

 

・住

私たちがホームステイをしたのは、KKMIという牛乳加工場内でした。寝起きしたのは、職員が休憩するための部屋でした。どこかの家庭に滞在すると聞かされていたのに、着いてみたらそのような場所で、部屋の狭さとか、トイレに便座が無いとか、シャワーは、水しか出ないということよりも、こんな場所に二人で残されて、安全面で本当に大丈夫なのだろうかと不安になりました。しかし、隣の部屋に機械メンテナンスの男性が寝起きしていると聞き、安心しました。

奥の部屋で寝泊り。 世話をしてくれたトーリツ

部屋は4畳半くらいで、二日目からは二段ベッドが入りました。 部屋の天井や外の壁には、たくさんのヤモリがいて、夜になると鳴き声が聞こえました。また、部屋の中にはどこから湧いてくるのか、アリだらけで、おやつを置いてようものなら、確実にアリの行列が出来ていました。また、暑くて部屋のドアを開けておいたら、いつのまにか大きなカエルが入っていたこともありました。大抵どこへ行っても犬がいました。KKMIでは3匹の犬を飼っていて、人とのコミュニケーションをとる手段として犬がいたことはとても助かったように思います。

同居していた動物たち

部屋には、扇風機とクーラーらしきものがありましたが、涼しくなることは無く、毎晩、寝苦しくて一度は目が覚めました。 洗濯はタライを借りて、手洗いをしました。 フィリピンでは、洗濯機が無いのが普通で、珍しいことではないようです。干せるものは外に干し、下着などは、部屋の中にロープを張って干しましたが、湿度が高いため、なかなか乾きませんでした。

・人

現地の人たちは、よく笑い、冗談ばかりを言う楽しい人たちが多かったように思います。特に、フィリピンでは、女性が元気よく、快活で、精力的に働いているように見えました。 KKMIの工場の人たちは、皆さん明るく気さくな人たちで、日がたつにつれて、お互い慣れてきて話すようになりました。 毎朝、お互い相手の言葉で挨拶を交わすようになりました。 タガログ語を教えてもらい、日本語を教えることで仲良くなりやすかったと思います。ステイ先が牛乳工場だったせいか、様々な人が集まってきて仲良くなることが出来ました。現地では、英語で会話をします。 最初は相手の言っていることを聞き取るのに苦労し、自分の言いたいことが出てこなくて、この先どうなるのかと不安になりました。しかし、時間と共になんとかなることがわかりました。ほぼ、毎日一緒に過した方は、カウンターパートの二人です。二人とも女性で、UP内で研究員をしている方々です。 この二人との会話も慣れていくにつれ、だんだんと出来るようになりました。

・休日

休日には、学生全員が集まり、海やショッピングモールに連れて行ってもらいました。普段は、みんな別々の場所で滞在・活動していますので、それぞれがどんなことをしているかなど、色々情報交換をすることが出来ました。また、全員での予定が無い休日は、カウンターパートの別荘に連れて行ってもらい、フィリピン料理をごちそうになったり、庭先で子どもとバドミントンをしたりと、楽しい時間を過ごしました。

カウンターパートの別荘と家族のみなさん

 

【仕事内容】

乳質班の仕事の内容は農家やDTRI(Dairy Training and Research Institute)の牛乳の検査、つまり、CMT(California Mastitis Test)、TBC(Total Bacteria Count)、SCC(Somatic Cell Count)などです。 また、近郊の農家を回り、乳房炎の牛がどのくらいいるかなどを調査しました。 仕事は、カウンターパートから「明日はこれをするからね」と言われてやるといった感じでした。 KKMIまで朝迎えに来てもらい、活動する場所へ移動をしました。主に、DTRIでの仕事が多かったです。 また、乳質の検査の他にヨードを各農家に配布したり、ヨーグルト作りを体験したりしました。報告会では、各農家を回って感じた事、搾乳手順を見ていて気になった点などをそれぞれ挙げて発表を行いました。

・CMT

DTRIの牛とアルドリンさんという方の農場の牛の検査を行いました。乳房から牛乳を搾ったあと、そこにCMT用の液を入れ、牛乳の変化を見て乳房炎にかかっているか、かかっているのであればどの程度であるかなどを調べました。Negative, Plus1, 2, 3などのように判断します。判断を正確にすばやくするために、日本で一度でも実習をしてから行くとよいのではないかと思いました。また、搾乳を経験しておくことも必要だと思います。 結果は、Negativeの牛がほとんどいませんでした。搾乳手順にもいろいろな問題点があり、改善点が多々あるように感じました。

CMT検査セット これを見て判断します

 

・TBC及びSCC

これらは顕微鏡を使っての検査です。KKMIやDTRIに集められた各農家の牛乳(前日の夕方・当日の朝の牛乳)のサンプルを染色し、顕微鏡で検査します。牛乳中に含まれる、体細胞数と細菌数を数え、乳質をランクA〜Eに分けます。 途中停電が起こって数えられなくなることなどもありました。ただし、この検査の結果は、あくまでも参考としているだけで、牛乳の買い取りをしないなどの措置はとられていません。 実際に買い取りに影響するのは、機械を利用した牛乳の検査の結果のみです。 検査結果は農家に毎週伝えられていますが、あまりに結果のひどい農家には、カウンターパートが農家を見に行き、指導しています。

 

ヨードの配布

付近の農家にヨードを配布して回りました。ヨードとは、日本で搾乳前と後に乳頭を浸すディッピング用の液体のことで、フィリピンでは、まだこれをつける習慣がありません。ヨードは高価でなかなか手に入れることが出来なく、今回、初めてカウンターパートが配ったようです。配布と共に、農家で飼っている牛の頭数、牛舎の状況などを見て回りました。しかし、農家の方は、タガログ語しか話せない方が多く、直接、話すことはあまり出来ませんでした。牛の頭数は、多くて10頭くらいでほとんどの農家が副収入として牛を飼っているように思われました。

スキットと呼ばれる乗り物で移動 “スキット”の車窓から…

・ヨーグルト作り

カウンターパートの方とDTRIでヨーグルトを作りました。殺菌した牛乳に砂糖を大量に加え、よくかき混ぜた後、脂肪分を細かくする機械に通します。再び、よくかき混ぜ、冷やしたら下の写真に示したヨーグルトの種を入れ、1晩おいておけば完成です。さらっとした後味のヨーグルトが完成しました。

ヨーグルトの種

 

・牛舎の環境

フィリピンの一般的な牛舎の環境は、日本のものと比べると汚いものでした。床が泥だらけであったり、糞尿は、そのままであったりと問題点がたくさんありました。また、搾乳手順が徹底していないためか乳房炎の牛が増加しているのではと思いました。 今後は、基本的な搾乳手順を徹底させることで、乳房炎の牛も減り、乳量の増加が期待できるのではないかと思います。

放牧地 ホルスタイン??

 

【最後に】

協力隊員として何か成果を残すのは難しいことです。本当に何かやりたいことがあるのであれば、自分から、“今日はこれがしたい”など希望を伝えられればよいと思いますが、実質的な活動期間が2週間と大変短いため、ちょうど慣れたころに帰国といった感じでなかなか難しいことだと思いました。ほとんど受身の活動でしたが、報告会できちんと思った事を伝えることが大事だと思います。いろいろな分野のカウンターパートに活動を伝えることができる場であるし、また、普段カウンターパート自身が言えないことを私たちが代弁するといったことにも利用できると思います。何かを企画して、学生の間で継続していくことは、難しいことですが、私たちに対応してくれたカウンターパートの方々の信頼を継続していくことで最終的に何か活動の一端を担えるようになれたらいいと思います。本当に日本では、絶対に食べることが出来ないもの、経験することが出来ないことが出来ます。フィリピンがどのような国なのか検討もつかなかったような状態から、自分にとってとても身近な国へと変わっていきます。このような素晴らしい経験をするチャンスをくださった、JICAの方々、そして先生に感謝いたします。どうもありがとうございました。

←カウンターパートとの打合せ

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