JICA青年海外協力隊短期派遣制度に基づく海外実習 I

フィリピン酪農開発強化プロジェクトへの協力隊チーム派遣に
同行した引率教員としての活動報告(行動日誌)

畜産科学科 教授
三好 俊三

はじめに

 学生には、行動(活動)日誌を記すことを課していましたので、引率教員としても日々の行動等を記述し、今後の参考にしていただきたいと思い、記録しておいたノートから要点を整理してまとめてみました。

学生隊員の選考から出発までの過程

5月下旬 : 海外実習に関する事案が提示される。その後、具体的な内容等の打合せや日程等の検討を重ねる。
6月28日(火): 学生に周知するため、応募要項を掲示。
7月12日(火): 大学にてJICA帯広による説明会。
7月20日(水): 申し込みを締め切る。JICAの様式に沿った小論文を提出。
7月25日(月): 隊員の選考。面接と小論文の総合評価による。
10名を選考し、翌日JICA帯広に連絡する。
7月29日(金): JICA帯広にて打合せ会。JICAへ種々の書類を提出。
8月03日(水): JICA帯広にて勉強会。フィリピン事情や隊員としての心構え等の説明を受ける。
8月05日(金): 活動の具体的内容が明確でないが、小論文と本人の意向を参考に仮の班編制を行う。
8月11日(木): JICAマニラから現地での大まかなスケジュールが知らされる。
8月13日(金): 乳牛の育種についての初歩的なレクチャーを行う(三好)。
8月15日(月): 各班の少し具体的な活動内容が知らされる。
8月16日(火): 各班の活動内容について要点等の勉強会(三好)。班編制を正式に決定する。
8月17日(水): JICA帯広にてマニラ事務所とテレビ会議(東京本部も途中まで参加)。プロジェクトの概要、活動内容の概要等の説明を受ける。
8月18日(木): 出発式。JICA帯広の方も参加。学長から激励を受ける。
8月19日(金): 家畜生産衛生および農家への対応の仕方等のレクチャー(木田)。
8月20日(土): 実習記を投稿する掲示板が出来上がり、稼働する(仙北谷)。

海外派遣期間の日誌

8月21日(日): 帯広を13時の便で出発する。2名の学生が時間を間違え、乗り遅れる。16時の便に乗れ、夜に全員ホテルに集合できた。
8月22 日(月): JICA−JOCV東京本部においてオリエンテーション。フィリピンの事情、安全対策、協力隊員としての心構え等の説明を受ける。この時点で学生は、協力隊員となる。夜に成田のホテルに入る。
JICA−JOCV東京本部でのオリエンテーション
 8月23日(火): 7時にホテルを出て、空港に向かう。旅行会社によって団体扱いとなり、出国手続き等をすませ、9時に出発した。現地時間13時にマニラに到着。JICAマニラの若林調整員の出迎えを受け、全員無事、入国した。ホテルにチェックインし、着替えをして、JICA−JOCVマニラ事務所においてオリエンテーション。東京での事項よりもさらに具体的な説明を受けた。協力隊員としての身分証の交付を受ける。夜は歓迎会に出席した。
JICAマニラ事務所で所長(正面)
より激励を受ける
夜の歓迎会(フィリピン料理)
 8月24日(水): 国家ボランティア調整局においてオリエンテーション。協力隊の要請や受け入れ、また、配属等の調整を行っているとの説明があった。本プロジェクトの一員であるアイオニさんが同行した。通訳のエルモさんが、私のみについていることを主張(このことは後に解決した)したため、学生隊員への説明は、通訳に確かめながらサマライズして伝えた。
ボランティア調整局(正面玄関) 調整局でのオリエンテーション
         
        
昼食後、国家酪農局(NDA)において、オリエンテーション。フィリピンの酪農事情と今回のプロジェクトの概要について説明を受ける。前回と同様に私が通訳をとおして学生隊員にサマライズして内容を伝えた。また、他のプロジェクトに所属する正規の協力隊員(前田さん)が参加され、補足説明をしていただいた。その後、任地であるロスバニョスに移動し、UPのゲストハウス(シエルカ)に宿泊した。夜は、プロジェクトリーダーであるジョバウさんを交えての夕食会となった。
国家酪農局(正面玄関) 酪農局でのオリエンテーション
8月25日(木): 9時より酪農研究研修所(DTRI)においてオリエンテーション。ジョバウさんからプロジェクトのより具体的な説明を受ける。現地のCPや技術者の方々が多数同席した。また、正規の協力隊員1名(1ヶ月前に赴任)が我々のチームに加わり活動することとなった。昼食後、プロジェクトの分野別に、その責任者から活動内容の説明を受けた。通訳のエルモさんにとって、専門語が多くなり通訳できない場面が生じたが、専門語は私の解る範囲で解釈し、サマライズして学生隊員に伝えた。

その後、学生隊員は、各班に別れ、それぞれのCPや技術者と今後の活動の打ち合わせを行った。夕方、学生隊員はそれぞれのホームステイに向かい、私はマニラのホテルに帰った。
プロジェクトの説明を受ける 現地のCPや技術者と共に
 8月26日(金): 引場シニアと会うことができ、今回の学生隊員のチーム派遣に対する意義や大学としての取り組み、今後の活動の支援について意見交換をした。その後、学生隊員のホームステイ先を訪問し、そこの様子や学生隊員の感想等を聞き、状況を確認した。
8月27日(土): 昨日と同様に、他の隊員のホームステイ先を訪問し、それぞれの家族の方々と話をし、学生隊員の感想を聞き、状況を確認した。今日で各班のホームステイ先を拝見したことになり、学生隊員の様子から十分に活動できると確信した。
8月28日(日): 生き物相手の活動であるため、休みを取れない班もあろうと言われていたが、引場シニアの計らいで全隊員休みとなり、ビーチに出かけた。引場シニア、ジョバウさんとアイノニさんが同行した。帯広を出発してから1週間の疲れを癒すと共に明日からの頑張りを誓って別れた。帰路で激しいスコールに合い、水の上を自動車が走るような感覚を体験した。
夕方(7時)頃、長澤副学長がマニラに到着した。
8月29日(月): 長澤副学長とJICAマニラ事務所に出かける。長澤副学長は、次長と会談をしていた。私は、保健師と自分の体調及び学生隊員の体調管理のことを相談した。その後、ロスバニョスの事務所に行き、引場シニアに副学長を引き合わせた。この間、私は、DTRIに来ていた隊員の活動の様子を視察すると共に出来る範囲でのアドバイスをした。その後、副学長も加わり隊員の活動を視察した。
乳質班の活動 育種班の隊員に説明
8月30日(火): 長澤副学長と共に隊員の活動状況の視察に向かった。幸い3つの班(6名)が集まり、それぞれの活動をしているところであり、昨日4名の隊員と合っていることから、副学長は、派遣した学生全員に合い、その様子を見ることが出来たことになる。突然の副学長の訪問で学生隊員ばかりか、現地のスタッフも驚きと共に感激していた。CPおよび技術者と親しく懇談していたことが印象的であった。フィリピンでは、農家に副学長が来ることなど考えられないことであると、後で聞いた。
8月31日(水): 長澤副学長は、朝早く、通訳のエルモさんが空港に送り、帰国した。私は、引続き引場シニアの事務所を拠点として、出来るだけ隊員が多く集まる場所に出向き、その活躍ぶりを掲示板に投稿するようにした。今日は、育種班の相談に出来る範囲で応じた。
前田隊員とCPから説明を受ける隊員による飼料分析風景
9月01日(木): JOCV−JICAマニラ事務所によりプリンターを借り受け、シニアの事務所に届ける。引場シニアと学生隊員の支援について再度話し合う。特に、自動車の使用について時間的に都合のつく方の車を使い、人や物の運搬を行うようにすることを再確認した。隊員は、明日の中間発表のことで悩んでいるようであった。

大学から留学生係の松浦さんがマニラに来るとの連絡があった。
NDA事務所のスタッフ 濃厚飼料班の化学分析の様子
9月02日(金): マニラからロスバニョスに向かう途中で自動車にトラブルが起き、到着が大幅に遅れた。13時半頃より中間発表会がタランバにあるNDA事務所で行われた。酪農関係のスタッフがこんなに大勢集まったことはないと言っていたように、現地のCPや技術者のほとんどが参加したようである。学生隊員にとって英語でのプレゼンテーションは、初めての経験であり、緊張していたが、CPの方々がアドバイスをしてくれたりし、無事、発表と討論が出来た。ジョバウさんや引場シニアからも合格点が出され、発表会後の食事会は大いに盛り上がりをみせた。
中間発表会 終了後の記念撮影
9月03日(土): 育種班の2名のみがデータ整理の活動をしていた。休みであるジョバウさんとアイオニさんが付合っていたのが印象的であった。すなわち、学生のケアーをしていることになる。他の隊員は、交互にホームステイを訪れ、親睦を深めるという別の活動をしているようであった。いつものように掲示板に投稿しようにもUPとDTRIのみが停電で午後遅くに投稿できた。
9月04日(日): 全隊員休みとなり、マニラ近郊にある大きいショッピングセンターに出かけた。まだ、お土産を買うには早すぎるが、久し振りに都会的感覚の買い物ができ、満足していたようである。
9月05日(月): NDAを訪問し時に同行してくれた前田隊員を伴って、DTRIに向かった。前田隊員は、育種班と繁殖班の学生隊員への支援のために引場シニアが手配してくれたものである。またもやUPとDTRIは、停電で投稿が遅れることとなった。
9月06日(火): 繁殖班、粗飼料班および濃厚飼料班に同行し、この地域で最も大きい放牧主体の酪農牧場に出かけた。隊員らは、それぞれのCPに質問等を行い、討論をしている様子であった。私にも質問があり、解る範囲でアドバイスを行うこととなった。
牧場の放牧地 集まった種々の搾乳牛
9月07日(水): マニラから3時間半以上はかかるであろう別の酪農組合に属する農家を訪問した。JICAの若林調整員、山岸看護師、JICAの新人職員3名、畜大出身の帰国前の黒田隊員及びインターンの学生が同行した。学生隊員は、育種班の2名を除く、8名とそれぞれのCPと技術者が同行した。私達が合流する前に学生隊員らは、1農家を訪問していたようである。チャオンの農家に到着した時にスコールに遭い、外に出られない状態となったが、学生隊員らは、JICAの職員と意見交換を行っていた。昼食後、更に遠くのサルサヤの農家を訪れた。帰る時間も忘れるほど熱心な討議がなされていた。
良く見かける一般的な農家 チャオンでのスコール
9月08日(木): 通訳のエルモさんの提案で学生隊員を連れて行くショッピングセンターを安全面から変更したほうが良いと言うことで、そのセンターの下見に出かけた。通路が広くとられていて混雑したとしても安全であろうと思われた。13時に松浦さんを出迎え、そのままDTRIに向かい、引場シニアを始め関係者に紹介した。さっそく投稿原稿の作成をお願いした。今日は、今までにない暑さと湿度の高い日であった。
9月09日(金): JOCVの事務所において現地での最終報告会が行われた。中間発表会の時よりもさらに上達したプレゼンテーションがなされた。英語に少し馴れたこともあろうが、各班のCPと事前に充分な打合せが出来ていたようである。学生隊員にとって専門外の内容の活動であったが、うまく仕事が出来たと思わせる内容の報告であった。
JOCV事務所での報告会
         
        
その夜の歓送会は、場所をプール付のゲストハウス(?)で行われた。現地でお世話になった方々がほぼ全員集まり、手作りのフィリピン料理で盛大に行われた。修了証あるいは感謝状が隊員と私にも授与され、感激した。学生隊員は、いつまでも別れを惜しんでいる様子であった。

また、いつの日にか会えますように!
CPと学生隊員 CPと学生隊員
松浦さんを囲むCPと技術者 学生隊員と記念撮影
別れをおしんで!
9月10日(土): 再度、ショッピングセンターの下見をした。引場シニアの提案で女性隊員と松浦さんのために女性の通訳を付けることとした。学生隊員は、ロスバニョスからマニラにある協力隊員の集合宿泊施設(ドミトリ)に移動していた。明日および明後日の予定等の指示をした。
9月11日(日): 借り上げた車で学生隊員を下見しておいたショッピングセンターにピストン輸送をし、お土産等の買い物を楽しんでもらった。女性の通訳ジュリーさんを付けた。昼食後、学生隊員は、通訳の二人と共に他の買い物に出かけた。
夕方より、ドミトリにおいて、さよならパーティーが行われた。準備は、引場シニアをはじめとしてドミトリに一時滞在していた数名の協力隊員や若林調整員がやってくれた。JOCV−JICAからも本プログラムを支援して頂いた多くの方々が参加し、夜遅くまで盛大に行われた。
引揚さんを囲んで 若林夫人によるベトナム料理
9月12日(月): 9時よりJICAマニラ事務所において報告会が行われた。テレビ会議の形式であり、JICA帯広と結んで行われた。今回は、日本語であり、さらに具体的な内容の報告がなされた。11時にJICAマニラを出発し、空港に向かった。空港内外で何度もチェックを受けたが、全員無事、16時20分に出発し、日本時間17時半に成田に到着した。新宿のホテルには10時頃にチェックインできた。
JICAマニラ事務所とJICA帯広を結んでの報告会
9月13日(火): ホテルに荷物を預け、11時からのJICA−JOCV東京本部での報告会に臨んだ。学生隊員は何度目かの報告となるためか、さらに要点をまとめたプレゼンテーションであった。12時半頃に報告会が終わり、帰国報告書に署名し、協力隊員の任を解かれた。昼食後、実家に帰る2名と別れ、最終便で帯広に向かい、7時半に全員無事到着した。ここで引率教員の任を終えることとし、解散した。
JICA-JOCV東京本部での報告会
報告会終了後の懇談会の様子質問に対して適切な解答がなされ、こちらからの要望や意見も出され、有意義な懇談となった。JICAの評価も上がったと思われる。

今回の学生隊員の派遣に同行して、特に、私がお世話になった方々 

若林調整員 引場シニア隊員(中央)
プロジェクトリーダーのジョバウさん NDA―DTRIのアイオニさん

 

通訳、ドライバー、ガイドのエルモさん
10名の学生隊員
繁殖班: 梅下隊員
浅野隊員
育種班: 梶間隊員
堀江隊員
乳質班: 佐藤隊員
太田隊員
粗飼料班: 山元隊員
本慶隊員
濃厚飼料班: 高橋隊員
石亀隊員

帰国後の行動について

9月14日(水): 午後、学務課に挨拶、その後、学長、事務局長および長澤副学長に帰国の挨拶をした。
9月15日(木): 石橋副学長に帰国の報告。JICAマニラの若林調整員と引場シニアにお礼のメールを送信した。
9月20日(火): 実習でいない1名を除き、学長に帰国の挨拶と簡単な報告を行う。その後、石橋、長澤両副学長と懇談会をした。
9月26日(月): JICA帯広に出かけ、帰国の報告を行うと共に、懇談をした。JICA側から種々要望が出されたが、検討課題として考えたい旨を伝えた。
10月01日(土): 長澤副学長、学務課の関係者を交え、打ち上げ会を行った。
10月31日(月): 全学の教職員、学生に対しての報告会を予定している。