取組の特性
1.教育効果を上げるための工夫
農畜産の幅広い分野の知識と経験を獲得させてユニット選択を支援するためには,実習に十分な時間を確保するとともに,実習のメニューができるだけ多く用意され,本学の提供する農畜産の幅広い教育内容を網羅することが重要である。
平成18年度には,全部で11種類のメニューが用意されている。まずクラス毎に圃場とビニールハウス約3アールが用意され,学生はそこでバレイショ,トウモロコシ,トマトなどの畑作を行う。畑作は畑の耕起から種まきや苗植え,マルチ掛けや間引きを経て日常的な管理が収穫まで継続的に行われる。それと並行して,学生はヒツジの毛刈り,搾乳,乗馬,土壌調査,植生調査,水質調査や川の生態調査,農業機械の操作,食味検査と市場調査,ソーセージなど乳肉製品の製造といった幅広い分野の実習を経験していく。
成績評価では,実習中の自主的な工夫や作業ぶり,リーダーシップなどを3人の教員が評価し,加点や減点を行うことで学習への動機づけを重視する。教育効果を確実にするため,欠席者や遅刻者に対しては予備日や放課後を利用して補講を行い,学生全員が全実習メニューを必ず経験するようにする。また,実習には大学院生のTAを優先的に配置して実習の円滑な運営,上級生とのコミュニケーション促進を図る。
作物栽培
ハウスの土作りから始まり、トウモロコシのは種、ジャガイモの種イも植え、トマトの移植等を実施し、水やり、除草などの畑作業を行い、1年前期最終週(夏休み前)に収穫をする。基本的に化学農薬は使用しない。
乳肉食品生産
ミルクからバター、アイスクリームを作る。豚肉でソーセージを製造する。平成19年度からは自分たちの飼育した豚を利用してソーセージ製造を実施する。
家畜管理
入学式の次の週に羊の毛刈りを実施する。6,7人の班で2日間搾乳実習をフィールド科学センターで行う。馬の手入れ等を学び乗馬実習を実施する。平成19年度からは豚の飼育を開始する。
そのほか
土壌調査、近くの河川の水質調査、農業機械の操作、消費者選考調査などを実施する。
2.学生の人間的成長を促すための工夫
学生を30~40人のクラスに編成して実習を行い,そのクラスに3人ずつの学生支援教員を配置することで,欠席状況や作業の様子などから学生の健康状況や学習意欲を常時把握するなど,新入生に対して学生支援教員が様々な面から目配りができる。このことは学生の大学生活への適応状況をチェックし,適切に支援するために重要である。
また,学生は実習で常にクラスメートとコミュニケートし,協力して作業しなければならない。これにより学生はクラスメートとの対人関係を確立し,助けあう関係を作ることができ,大学生活に必要なコミュニケーション能力も磨かれる。実習は学生支援教員との共同作業で行われるため,教員とのコミュニケーションも促進される。獣医学科と畜産科 学科の学生を混成したクラスを編成することで,学科間の学生の交流や相互理解を促進する工夫も行っている。
3.現代的課題への対処
本取組が対処しようとしている現代的課題としては,まず入学者の多様化や質的変化への対応が挙げられる。普通校からの入学者増加と受験科目の多様化にともなって,本学を志望するバックグラウンドや高校での理数系科目の履修状況も多様になっている。そうした学生に入学前の学科選択,コース選択を求めることは,イメージや思い込みに基づいた学科選択と入学後の失望,動機づけの低下の原因となる。
本取組ではアドバンス制の導入,ユニット選択を支援する全学農畜産実習の実施によって,こうした現代的な課題に対処しようとしている。同様の問題は他の農学系あるいは理工系大学にもみられるものであり,本取組の成果は他大学の参考になると思われる。 また,最近の入学者は学生生活への適応にトラブルを抱えたり,同級生とのコミュニケーションや人間関係に悩んだりする傾向が強い。本取組がクラス編成による実習を通じて学生間のコミュニケーションを促進していることは,そうした現代的課題への対応といえる。
