取組の趣旨・目的
1.取組の背景、社会的ニーズについて
帯広畜産大学は創立以来、日本の食糧基地である北海道十勝の立地条件を生かし、特色ある教育研究を進展させるとともに、世界の農畜産業の発展に大きな貢献をしてきた。とくに獣医畜産分野では、地域との連携を通じ、周辺に35万頭以上飼育される牛・馬などの大動物を生きた教材として実践的教育を実施してきた。
ところが平成13年国内で初めて牛海綿状脳症(BSE)罹患牛が発生後、食品生産・衛生行政構造が大きく変化した。牛と牛肉の生産に関しては「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」および「牛海綿状脳症対策特別措置法」の施行により、24カ月齢以上の牛の解体前には延髄を材料にしたBSE検査が義務づけられ、結果が陰性と判定されるまでは全ての部位を保存しなければならなくなった。このことは獣医学教育に大きな影響を及ぼした。牛の疾患の多くは成牛で発生するが、24カ月齢以上の牛を解体する場合にはBSE検査実施のための特殊な検査施設が必要である。これら施設を保有しない国内のほとんどの国公立獣医系大学では、生きた病畜を搬入しても、解体前には施設の整った都道府県の家畜保健衛生所等に牛を移動させ、BSE検査で陰性を確認した後の死体を大学に再搬入することが必要となる。輸送労力とコストの問題、また新鮮な教材が得られないという問題が生じるため、現在多くの大学では獣医学教育の材料として生きた牛を用いることが困難となっており、大動物臨床獣医学教育の質の低下を来している
農林水産省による獣医師の需給見通しによると、大動物診療に携わる臨床獣医師(産業動物獣医師)は毎年約4000名必要であるにもかかわらず、今後の大動物臨床獣医師の供給については不足すると予想されている(平成19年5月獣医師の需給に関する検討会-最終報告書-右図参照)。このため大動物臨床獣医師の養成・輩出は社会的なニーズであり、本学における取組は政策的にも重要なものである。
2.取組の学生教育の目的と成果に関する具体的な目標について
このような背景と社会的ニーズに対し、実際の生きた大動物病畜を用いた実践的な臨床獣医学教育を展開し、「実践的診療技術と論理的な問題解決能力、および高いコミュニケーション能力を有する大動物臨床獣医師を育成する」ことが目的である。
具体的な成果目標
- 大動物臨床獣医学に興味を持たせる
- 学生が生きた病畜に触れ・考え・発表することにより問題解決能力を養成する
- 質の高い大動物臨床獣医師を育成する
- 実践的大動物獣医学教育プログラムを確立し全国の獣医系大学に普及する
3.学部等の人材養成目的との関係について
帯広畜産大学の人材養成ポリシーは「食の安全・安心に関わる専門職業人として活躍できる人材」を養成することである。本取組においてはとくに乳肉等畜産食品の根幹となる畜産生産現場において食の安全・安心を管理する大動物臨床獣医師育成という点で本学の人材養成目的と一致する。