概要

 大動物臨床獣医師数は今後不足することが予想されており、獣医系大学におけるその養成と輩出は、政策的にも重要な社会的なニーズとなっている。しかしながら牛海綿状脳症(BSE)発生以来、わが国の獣医学教育においては大動物、とくに牛を教育材料として用いることが困難となっており、もっぱら小動物を中心とした教育内容が中心になっている。このような状況の中、帯広畜産大学では日本の食糧基地として大学周辺に35万頭以上の牛馬が飼育される北海道十勝の立地条件を生かし、また学内に整備されたBSE検査体制と連携して、大動物病畜を生きた教材として実践的獣医学教育を行ってきた。

 本取組ではこれまでの特色ある獣医学教育をさらに発展させ、「実践的診療技術と論理的な問題解決能力および高いコミュニケーション能力を有する大動物臨床獣医師を養成する」ことを目的に、地域と連携して実際の大動物病畜を材料とした実践的臨床獣医学教育を実施する。具体的な成果目標は、(1) 大動物臨床獣医学に興味を持たせる、(2) 学生が生きた病畜に触れ・考え・発表することにより問題解決能力を養成する、(3) 質の高い大動物臨床獣医師を育成する、(4) 実践的な大動物獣医学教育プログラムを確立し全国の獣医系大学に普及することである。

 目的を達成するために、2~3年次の基礎獣医学、3~4年次の応用獣医学、および4~6年次の獣医臨床学の講義および実習、さらには5~6年次の総合臨床学講義・実習においては、地域から搬入される大動物病畜を材料とし、学生に「触らせる」「考えさせる」ことを通じて、学生の自主性と積極的な学習態度を導き出し、教育効果を上げる。また地域農業団体等の臨床獣医師に臨床指導教授として協力連携を仰ぎ、学生に対して生産現場における大動物の各種疾病の供覧、各種診断検査および治療を経験させた上で、難診断病畜については特殊検査および病理解剖により病態を把握させる。この際、学内のBSE検査体制との連携により、診断や特殊検査と病理解剖との時間を短縮することで臨床獣医学の流れを一貫して体験させ、理解度や教育効果を高める。さらに、一連の検査終了後には症例検討会を開催し、症例のまとめ方と症例報告の実際を学生に経験させて、コミュニケーション能力の向上を図る。これらの実習により総合的な臨床獣医学の考え方と技術を体得させるとともに、学生の自発的な問題検討能力とコミュニケーション能力を涵養することで、食の安全・安心の確立のために活躍する大動物臨床獣医師を育成する。

 取組の達成度については、自己評価委員会および外部評価委員会による評価を受け、年度毎に報告書を作成するとともに報告会を開催する。教育効果の指標となるのは、学生による授業評価、成績、卒業研究等への影響、獣医師国家試験合格成績、就職実績、就職先での卒業生の評価、臨床指導教授による意見等のほか、獣医学教育プログラム確立の成果物としてのマニュアルの完成度・普及度等である。