本学に着任した時、とても驚いたことが一つあります。それは、多くの教員があたかも呼吸するかのごとくに、発展途上国を中心としたフィールドワークに出掛けるということです。
 毎月報告される教員海外出張の資料には、東南アジア・アフリカ・南米の国々の名のオンパレード。顔色の悪い大学院生に事情を聞けば、1週間後にアフリカに行くためにマラリア予防薬を飲んでいて、その副作用に耐えている最中だと。ふと気が付けば、先生や学生が真っ黒に日焼けして、持ち帰ったデータを整理している様子。「今度○○国に行くんだけど」「それなら□□先生に聞くといいよ」「狂犬病のワクチンは○△クリニックが対応早い」「○△□は副作用ほとんどなくてお奨めです!」等々の会話が普通に飛び交う…本学はそんな大学です。
 海外を拠点としたフィールドワークは、一朝一夕に始められるものではありません。その国におけるカウンターパート探しから始まり、徹底的な信頼関係の構築の後、相互の研究機関の訪問や共同研究や学術協定の締結を実施し、初めて研究のスタートです。長い例では、10年掛かった話も聞いています。さらに発展途上国の場合では、私達の国と文化・習慣・宗教etcや、果ては考え方の基本的部分すら異なることもあります。そういう部分も含めてお互いに時間を掛けながら、理解し合うことが必須です。このあたりはまさに「経験」のなせるワザ、見えないノウハウが集約しています。
 それら本学の実績に基づいて、今回の「グローバルCOEプログラム」構想が生まれました。
 GCOEプログラムの主体は、大学院生等の<人材の若手シーズ>です。しかし、彼ら若手による海外フィールドでの教育研究活動は、実施経験豊富な本学ですら様々な面での大きな壁があり、必然的に教員が中心とならざるを得ませんでした。そこで、本GCOEプログラムによって、それを現実のものする仕組みを構築しました。教員や大学院生をフィールド展開させるには、従来のラボ単位の枠組みでは規模が大き過ぎ、ごく少人数では教育研究の効果が最大にならないと考えました。ならば、いっそのこと新しい教育研究単位を作って、機動的に動かそう…そのアイデアが5人前後の「セルユニット(機動的教育研究単位)」として具体化しました。そして、このセルユニットを利用して、古い学問体系から離れて、どんどん新しい学問的テーマを掘り起こそう、将来的には大学院の科目や講座になるような新領域にしよう…と。このような考えを、本学が世界に先駆けて生み出した獣医学・畜産科学融合領域である《畜産衛生学》に注ぎ込み、「アニマル・グローバル・ヘルス」開拓拠点ができあがりました。
 本GCOEプログラムでは、アニマル・グローバル・ヘルスの『国内』から『国外』そして『未来』に至る時空間的展開を指向しています。そして願わくば、このGCOEプログラムによって構築される拠点において、関わる全ての人々の『笑顔』についても<時空間的広がり>を与えたい。そしてそこから輩出された人材こそ、地球規模で広く活躍する高度専門家としてふさわしいと考えています。本GCOEプログラムによる活動をどうぞよろしくお願い申し上げます。
 拠点リーダー 嘉糠 洋陸