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獣医疫学/Veterinary Epidemiology


 

 

眞鍋式削蹄現場の見学

削蹄見学 S牧場(上帯広) 平成19年6月12日(火) 10:00〜12:50
報告者:畜産科学科・家畜生産ユニット4年 田村昌子

 乳牛において、定期的に削蹄を行って常に良好な蹄形を維持することは、蹄の変形や病気を予防し、繁殖成績の向上と乳生産の増加に貢献する大事な健康法である。今回は、削蹄師、眞鍋弘行さんの削蹄の現場を見学させて頂くため、上帯広にあるS牧場を訪ねた。

 S牧場では、61頭の搾乳牛(対尻式繋ぎ飼い牛舎(スタンチョン)36頭、フリーストール牛舎25頭)、および7頭の乾乳牛が今回削蹄の対象となった。
 S牧場と眞鍋さんの付き合いは、共済の獣医師の紹介で、3年ほど前から始まった。眞鍋さんに削蹄に来てもらうのは、今回で5回目だという。眞鍋さんに削蹄を頼むようになってから、だいたい年2回のペースで削蹄をしている。前回は去年の10月頃だったらしく、今回は2・3ヶ月遅れての削蹄だそうだ。また、前回の削蹄では、病気のひどい牛20数頭のみが集中的に削蹄されたとのことで、今回、多くの牛のツメはかなり伸びていて、待ちに待った削蹄であった。

 私が見学させて頂いたのは、繋ぎ飼い牛舎の削蹄だった。親方である眞鍋さんが到着する30分ほど前から、4人の弟子の方々が、枠場をトラックから牛舎の通路へ運んだりして、着々と準備を進めていた。眞鍋さんが到着する頃には、牛も枠場に入れられ、すぐに削蹄が始められる状態となっていた。
 枠場は、牛の頭が向かい合わせになるように置かれた。2台の枠場を境に、枠場ごとの牛とし、片方は牛舎の端の牛から中央の牛まで、もう片方は中央の牛からもう一方の端の牛までが、それぞれ順番に削蹄されていった。

 以下に私が観察した、眞鍋さん達の削蹄の手順を示す。

削蹄手順

  1. 牛を枠場に入れる。
  2. 腹帯を装着する。
  3. 前後の左足に、鎖のつながったバンドをつけ、機械で鎖を上げていき、前後の左足を保定する。
  4. 右側の足には、鎖のつながったバンドをつけ、後で上げるだけにしておく。
  5. 前後の左足の蹄の汚れているものは汚れを取る(以後、前肢後肢共に1人ずつついて2人で作業していく)。
  6. 電動削蹄機で削る(あまり削らないものはここで終わり)。
  7. 鎌形蹄刀で削る。
  8. 再度電動削蹄機で削って終わる(病気がある場合、薬をつけた脱脂綿を趾間にはさみ、包帯、テープで巻く。軽いものは脱脂綿のみ。)。
  9. 左足を下ろす。
  10. 左足前後どちらも下ろしたら、右足前後を上げる。
  11. 左足と同様に削蹄する。
  12. 牛を枠場から出す。

 

牛を枠場に入れる前と出された後の動き

1.牛の頭をスタンチョンからはずし、頭絡をつけておく。
2.前の牛が終わるまで、牛床で待つ。
3.終わった前の牛が、一旦スタンチョンの柱にロープでつながれると同時に、頭絡をつけられて待っていた次の牛を枠場へ連れて行く。

1.一旦スタンチョンの柱にロープで結んでおく。
2.次の牛が枠場に入ったら、前の牛をスタンチョンにつなぎ、頭絡をとる。
3.頭絡を次の牛につけておく。またはその牛の前においておく。

 

  一本の足は約2〜3分で終わり、2〜3人で1頭をやるので、大体5分、長くとも7〜8分程度で、1頭の削蹄は終わっていた。
 枠場の右横には紙が張ってあり、削蹄中に一頭一頭のチェックがされていたようだった。
削蹄と言うと、4・5種類の道具を使ってやるイメージがあったが、眞鍋さんたちは、汚れをとるヘラのようなものと、電動削蹄機と、蹄刀の3つのみで、とてもシンプルであった。電動削蹄機は荒落としから、蹄底の削切や、鑢かけまでといろんな使い方ができるようだった。
 ほとんどの仕上げや、病気のある蹄の削蹄は眞鍋さんがやっているようだった。そのほか、弟子の4人のまとめ役のような人、一通り削蹄する人、蹄の汚れを落とす人、包帯巻きをやる人などに分かれているようにも見えたが、はっきりと分かれているかどうかはわからなかった。しかし、牛を枠場に入れる前と出された後の動きを見ても効率的な仕組みでやっているようであった。削蹄の作業もとてもスムーズに見えたので、何か決まった流れがあったのだろうと思われた。
眞鍋さん達は、ほとんどしゃべったり休んだりすることなく、黙々とぐるぐると動き回り、どんどん次の牛へと変えられ、作業は進んだ。そして、削蹄が始まってから2時間半かからないほどで、残り3頭のみ残し、つなぎ牛舎のほとんどを終えた。

 今回の削蹄では、PDD(イボ状皮膚炎)の牛がたくさんいたようだった。また、蹄底潰瘍の蹄も見ることができた。これらの病気の場合、つま先立ちになるように削ってやることで、治るという。実際に、前回そのように処置して、今回、治っていた蹄を見せてもらった。つま先立ちにしたら、負重が不安定になるのでは、と感じられるが、そうではなくしっかり安定するらしい。

 今回は削蹄の方法の方ばかりを観察していたので、蹄病についてはあまり観察をしなかったが、次見学できる機会があれば、病気の症状についても、よく見たり聞いたりしたいと思う。

 つなぎ牛舎において牛舎内で削蹄をやる理由を、眞鍋さんは、牛にストレスを与えないためだと話していた。牛は、普段いる場所に一番近いところで削蹄されるのが、ストレスが少ないらしい。また、それは周りの牛にとってはストレスとなるが、牛舎の外に出すやり方だと、手間がかかるし、牛は知らない人にどこに連れて行かれるのか、と不安になるので、結局ストレスになるのだという。

 

 S牧場では、眞鍋さんと付き合う以前、はじめは、削蹄はSさんご自身がやっていたが、自分でやると体が痛くなってしまうので他の人に頼むようになった。しかし、獣医に頼んでも、獣医は澤田さんの都合のいい時間に合わせてくれないし、一人で何日もかけてやっと終わる、という具合だったという。
 一方で、眞鍋さんは、4人の弟子を引き連れ、2台の枠場と電動削蹄機を巧みに使い、1日で全頭数やってしまう。Sさんの奥さんは、この削蹄にかかる時間の速さを評価していた。また、Sさんは、眞鍋さんの枠場を評価していた。前足の膝を前に折り、蹄が少し外側にくるような保定のやり方や、牛が削蹄中にする糞や尿を受ける袋などは、眞鍋さん独自のものだという。さらに、Sさんは眞鍋さんを“技術があれば自信が持てる。彼には信念がある。(年齢は)2つ下だけど威圧を感じる。”と言っていた。Sさんが眞鍋さんに削蹄を任せられる理由は、眞鍋さんの、信念を持って削蹄をしている点であろうと感じた。

 

参考

眞鍋さんのホームページ 削蹄塾わたりがらす

大地勤務 「牛の爪を削る」 文・水口迅(EastSide12号)

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