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Africa Veterinary Epidemiology Veterinary Communication

獣医コミュニケーション/Veterinary Communication

 

けいよう女性の会 (B支部)
「繁殖管理に関するワークショップ」報告

 

ちばNOSAI連西部家畜診療所

堀北哲也,櫻井宣子,新倉由美子

I .開催場所,日時,参加者

場 所 B市農業会館会議室

日 時 2005年11月24日(木)AM11:30〜PM3:00

参加者 酪農家7人

関係機関 9人

 

II .事前の打ち合わせ内容

  • 今日までの流れ,前回の話のうち発情発見に焦点を当てる(櫻井)

  • ワークショップの説明(堀北)
    今日の獣医師は指導も講習もしない。生産者のほうが、農場の問題点・解決法を良く知
    っている。それを助けたい。
    楽しくゲームをするひと時にしたい。ゲームをしながら感じたことを大事にしたい

  • すべてのゲームについて、各ゲーム実施後、参加者に感想を求める。また、全ゲーム終了後、全体の感想を求める。

  • プチ講習(櫻井)にて,若干の獣学的知識の講習も実施

  • 助手(新倉由美子)は、記録および写真撮影
    参加者の発言をメモ 誰が何を言ったのか,の発言ポイントを漏らさず記録
    その発言記録を担当獣医師に還元する(重要)

 

III .プログラム

イントロ
  • 参加者へこの集まりの趣旨説明。講習会ではなくみんなで考えていくことを強調。

  • ワークショップ4原則を4枚の簡単な絵を貼りながら説明

  1. 楽しんで下さい(にこにこ顔の図,図1左上)
  2. 積極的に参加して下さい(円から外に向かって矢印が 
    描かれている図,図1右上)
  3. 人の話をよく聴いて下さい(円の中に向かって矢印が
    描かれている図,図1右下)
  4. 喋りたくないときはパスもOK(円の上を矢印が通り過ぎている図,図1左下)
    ・櫻井,新倉の到着まで堀北が自分の夫婦関係について場つなぎ的雑談する。

図1

 ざっくばらんなこのイントロ話が以後の話しやすい雰囲気の下地を作ることにもなった。固い場を崩すことの重要性を再認識する。

開始当初の固い雰囲気の会場
(この「講習会」という雰囲気を壊していく)

くだけた話で場を崩していく

(机の配置も自由に変える)

 

アイスブレーキング

(1)「自由の女神ゲーム」+自己紹介

全員(関係者含む)が、名前と、自分が自由の女神のように立つなら右手と左手に何を持つかを一言紹介。(例:右手に臨床・左手に疫学,右手に嫁はん・左手に子供など)

自由の女神の姿で一言

何を両手に持ちたいですか

 

 

メインゲーム

(2)「私は牛ゲーム」

目的 発情兆候の再確認,知識の共有
方法

発情牛がどんなそぶり,サイン,メッセージを発するかを列挙してもらう。
それをポストイットで書き出し,グループ化する。

結果

そわそわする,キョロキョロする,なんとなく神経質,落ち着かなくなる
眼がキラキラ,イキイキしてる,セクシーにふりかえる
粘液がでる,ねばっこい粘液,陰部が赤くなる
隣の牛に顔つんつん,変な声でなく(ウォー),食欲が落ちる,おっぱいあげちゃう
においに敏感,すっぱいものが食べたくなる(かも)
他の牛に乗る,乗られて動かなくなる,他の牛に追いかけられる
ふだん集まらない時間に集会してる,パーラーに入ってくる順番くるう
万歩計がぽーんとあがる

考察 生産者は発情時に牛がどのようなサインを示すかをすでに認識している。場合によっては,獣医師が気づかないことも知っている。また,生産者によって認識に差があったが,皆で発情時のサインを列挙することにより,認識の統一を図れた。

私は牛ゲーム

 思いつくままに発情の時の牛の様子を挙げてもらう。

それをカードに書いて張りだし,整理する。

 

(3)「発情見逃しゲーム」 

目的

知識として発情兆候は認識していても,どんなとき発情を見逃すかを明らかにし,さらにその対策の検討へつなげたい

方法
  1. 5分間、床に大の字になって寝てもらい、または机に突っ伏して,どんなときに発
    情を見逃すか,どんなときに発情観察を怠るかを思い出してもらう(眠ってしまっても可)。
  2. 発情を見逃したり発情観察を怠ったりする状況をカレンダーの裏に書いてもらう。
  3. 各自に発表してもらう。
  4. 発表してもらいながら,書いた項目を切り取り黒板に貼っていく。関連のある項目は並べて貼る。
  5. 黒板に貼られた項目を見ながら皆で話し合う。
結果

皆の書いた項目は下記のように大きく6つのグループに分かれた
「どんなとき発情を見逃しますか? どんなとき発情観察を怠りますか?」

  1. 牛に関すること
    発情徴候が短い(未経産),発情がすぐ終わってしまう,発情が弱いとき,
    周期がずれたとき,周期の把握,周期を把握しきれないで見逃す
    周期を勘違いしていた,牛の顔を覚えていない
  2. 技術者に関すること
    もしかしてとまっていたかもしれないのに獣医師の直検で流れるなんて…
    授精してくれるのにとまらない,腕悪い?
  3. 忙しさに関すること
    時間に追われているとき,子供の世話に追われているとき,
    用事が重なったときなど,電話を忘れる一通りの仕事が終わると家事に追われて見に行かない
    搾乳時は時間に追われるので細かい点を見逃すことが多い
    出かける用事があるとき,仕事の後に楽しい用事が待っているとき
  4. 人間の体調に関すること
    自分の体調が悪いとき,夫が二日酔いのとき
  5. 仕事のマンネリ化に関すること
    マンネリ,毎日同じ仕事をしているので,体はちゃんと仕事しているが,
    頭の中で子供のこと,食事のメニュー(冷蔵庫の中身)を考えていた
    考えごとをしていて,なんとなく仕事をしているとき
  6. 仕事の担当制に関すること
    伝達ミス,主人の担当と思っている,以前夫に発情を知らせたら知ってるよと
    怒られたためまた知らせようかどうしようかと迷っているうちに言い忘れる
考察

見逃す理由の3分の1は獣医学的に解決または助言できることだった(1,2)。この部分に関しては,講習会型式の知識移転,あるいは技術者のスキルアップにて対応可能。しかし,残りの3分の2は,酪農以外の生活に関すること,人間関係に関すること,仕事に取り組む姿勢などであった(3〜6)。これらの問題に関しては獣医師は解決法を持っていない。今までのような講習会では問題の3分の2を占めるこれらのことについては解決不可能。この問題をどう解決するか,その方法は生産者自身が考えていかなければならない。今後,この3分の2を占める問題を生産者自身が解決するための方策を探るワークショップを継続して実施していきたい。

 

思いつくままに書いてもらう

それを発表し壁に貼っていく

 

(4)「プチ講習」(担当:櫻井)

(3),(4)の話を受けて,獣医学的知識の講習を実施

講習内容:「女性のための飼養管理」 

よき女将になるために。発情とは。発情徴候。受胎成績のいい酪農家の発情観察の共通点。適切な飼養管理。BCS。ストレス。難産。

 ゲームばかりじゃなくて勉強もしたいという希望が 

他のワークショップであったので,ゲームの合間に,プ

チ講習を実施。

櫻井獣医師によるプチ講習  

 

 

エンディング

(5)「こんがらがりゲーム」

  1. まず、1人を残し全員(14人)が手をつなぎもつれた状態を作る。残った1人が言葉で指示してそれをほどく(1分20秒かかった)。次に,14人で同じようにもつれた状態を作り、今度はもつれた14人だけでもつれをほどく(15秒かかった)。
  2. 人に指示されて解決するより、自分たちで解決したほうが早いことの例示。
    指示するヒトは獣医師,こんがらがった輪は問題を抱えた農場。獣医師の指示のもと問題を解決しようとしても時間がかかる,自分たちで解決した方が簡単で早い,ことの例示。

丸い輪は問題のない農場
こんがらがった輪は問題だらけの農場

 

IV .アンケート結果

1.生産者の回答(カッコ内は人数)

Q1.「今日は楽しかったですか?」

5:とっても(2),4:楽しめた(5),3:ふつう(0),2:ちょっとねえ(0),1:つまんない(0)

Q2.「参考になったこと,勉強になったことはありましたか?」

5:大いにあった(1),4:あった(4),3:少しあった(2),2:ほとんどない(0),1:ない(0)

Q3.「何か実行してみようと思いましたか?」

5:はい(4),4:少し(1),3:うーん(2),2:えーと(0),1:いいえ(0)

Q3-2.「少しでも実行してみようと思った方へ:それはどんなことですか?」

  • 自由の女神ゲームで両手に持つもの・・・大切なもの?を,もっと沢山増やしたいと思います!
  • 発情チェックを日常にとり入れたいです!
  • 仕事中は仕事に集中する。
  • 発情に気づいたら,すぐに主人に言う。
  • 牛舎をきれいにしようと思った。
  • 牛舎になるべく足を向けようと思った。
  • その場で発情をチェックする

Q4.「またこんなワークショップ形式の講習会に参加したいですか?」 

5:ぜひ(2),4:できれば(3),3:どっちでも(1),2:あんまり(1),1:もういや(0)

Q5.「もしよろしければ感想を一言?」

  • 自分で参加できるものや,身体を動かして覚えるものはいつまでも覚えているし,
    吸収が早いように思います。また是非お会いしましょう。
  • 楽しかったです。餌の話も聞きたかった。
  • 眠くならずに楽しかった。
  • 心おきなくおしゃべりができた。雰囲気が良かったと思う。すすめ方が良かった。
    正直にざっくばらんに家庭のことなどもおりまぜてのトークが心をほぐしたと思う。有り難うございました。

2.関係機関参加者の感想

  • 普及手法としてずーっとあった事ですが,ワークショップ手法を他の機関でやることに参加したのは初めてです。
    ファシリテーター役がとても上手でとてもよく進行され楽しかったです。参考になりました。
  • 獣医学的な部分のみでなく他の要因が大きいことがわかった。今日のような発言を引き出す訓練もいるかなあ。
  • 全員で参加できた内容であった。
  • 農家の方には参考になったと思う。
  • 皆で参加できた講習だったと思う。
  • 参加型の講習会でただ聞いているよりも一人一人が考えるのでよいと思った。

 

V .まとめ

 会合全体が極めて楽しい雰囲気のもと進行できた。また,発情徴候についての知識の共有化が図れた。さらに,発情を見逃すときについて話し合い,その結果,酪農以外の仕事の忙しさ,家族関係など非獣医学的な要因が大きいことが明らかになった。次回の会合では,この非獣医学的な阻害要因をどう克服していくかを生産者の人たちと考えていきたい。

 あわせてプチ講習会も盛り込み,知識や技術の移転も実施した。今までの講習会では知識や技術の伝授に100%時間を割いたが,このワークショップ型式の講習会では,生産者自らが考える時間を80%,知識を伝える講習を20%位の配分で進行することに配慮した。

  また,ワークショップ開催後のフォローアップが極めて重要であると認識している。具体的には,参加酪農家の担当獣医師との連携を図りつつ以下のことに留意したい。

  • ワークショップでの生産者の発言内容を担当獣医師に伝える。

  • 担当獣医師は,生産者の認識・考えを尊重しつつ,酪農経営向上のためのアドバイスをする。

  • 担当獣医師は,生産者の発するメッセージをキャッチし,次の活動につなげる。

 しかしながら今回のワークショップでは担当獣医師が参加できず,我々からも会合の詳細な結果を提供しなかったので上記連携が不十分であり,今後の課題となった。

 担当獣医師が地元で講習会を依頼される機会は多く,その際に担当獣医師自らがこのようなワークショップ型式の講習会を開くことにより,生産者の考えていること,悩んでいることを知り生産者の自発的な活動を引き出すことができると考える。

 

(問題の整理までは行く。ここからが難しい。と生活改善の普及活動で実績のある鈴木幸子さん(農林振興センター,普及員)談)

 

予備ゲーム(時間があれば実施する予備ゲームとして)

・「これが大変ゲーム」(目的:次回以降の会合のテーマを決める参考に)

1) 毎日の仕事,家庭生活で何が大変かをKJ法にて列挙・整理。

2) グループ化し,ランキング

3) 上位にきた問題を次回に取り上げる。

・「獣医師の悩み相談室」

 獣医師が農家に悩みをうち明け,相談に乗ってもらう。

・「悩み相談室」

 農家・主催者混ざって4人一組になり,1人が残りの3人に悩みを相談する。

 

 

 

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