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JICAフィールドスタディプログラム(2015/2/18〜3/8)を終えて

帯広畜産大学畜産学部 土井 保真利

1)結果サマリー

 今回のプロジェクトを通して、持続可能な社会の発展において、発展途上国と呼ばれる国に対して日本が行うべき援助は、持続可能な技術支援であることが明らかとなった。現地にて訪問した事業団体のほぼすべての方々が、現地人の自立を第一に活動していると語られた。日本人がよく行う、鉛筆、ノート、衣類といった物資の援助、学校を建てるだけの支援だけでは、現地の人々が支援を受けるのを待つだけの姿勢になり、物を与えるだけで終わってしまうからである。技術支援とは、一人一人が技術を身につけ、支援組織が去ったのちも、彼らがそれを使い、生活を営める状態を目標としている。日本が技術に富んでいるという点からも、この支援形態は現段階では望ましいと考えられる。今後は、このような技術支援だけでは、問題が生じる可能性もあると考えられるため、常に最善の支援方法を模索することが望ましい。

 

2)事前研修概要

 事前研修では、JICAの概要説明、インドネシア、カンボジアに関する概要が説明され、現地プログラムに向けた準備を進めた。グループテーマは、「開発の裏側」とした。これは、開発をする際には、建設物を建てる場合、周辺環境への影響、人民の立ち退き、伝統や文化が変化するといった様々な問題が生じることを受け、開発のプラスの面だけではなく、マイナスの面に着目し、マイナスを減らすにはどうしたらよいのかを考察することを目標とした。個人テーマは、「農業と牛の関係」とした。現地に赴くまでに把握していた情報としては、カンボジアにおいて人口の約60%が農業に従事しており、ほとんどの農家が牛を利用して農業を営んでいるというものだったため、牛を飼っていることのメリット、デメリットに焦点を当て、デメリットの解決法を考察し、牛を飼いやすい環境を整える支援を行うことを目標としていた。

 



3)現地活動概要

3-1:個人テーマについて
 現地に入り、まず明らかとなったのは、カンボジアという国全体で、農作物の収量増加を目指して、機械化が普及しているという事実だった。これは、個人テーマである牛を農作業に使うという前提が大きく覆されることとなった。そのため、テーマの内容を少し変更し、機械化が進む中で牛を大切にする文化をもつカンボジアという国において、今後の牛と人との関係性に着目して調査する方向にした。

 

3-1-1:結果
 都市部であるプノンペンでは牛の姿はほとんどなく、地方に行けば行くほど頭数が増える傾向があった。今回調査地となった、コンポンチャム州プロジェクト村では、エレコンの事業参加条件として、牛を飼っていることが条件として挙げられていたため、ほとんどの農家で牛を所持していたが、農作業ではなく、堆肥づくりや、子牛を売るビジネス目的で飼育されていることが明らかとなった。今回調査した農家は16件、そのうちプロジェクトに参加している農家が9件、非参加農家が7件である。このうち6件は農機具をレンタルもしくは所有しており、牛を所有せず農機具だけを所有している農家は2件だった。このうち1件の農家は、新しい母牛を1頭購入し、生まれた子牛を売り、ビジネスをする予定であると語った。他1件は、収穫期のみではあるが、機械を使用するため牛の必要性はないと語った。非参加農家7件のうち、1件は、プロジェクトに参加したいと考えている農家であり、自分の家で堆肥を作っていた。この農家は、牛を1頭しか所有しておらず、堆肥の原料となる牛糞は周辺農家から購入したり、田んぼに落ちているものを収集していることがわかった。また、昔は牛を7頭所有しており、堆肥づくりや農作業に利用していたが、子供の教育費を賄うために牛を現金に換えたという事実も明らかとなった。また、牛を所有している農家も機械を利用した農業を行っており、牛の所有目的は現金収入といったビジネス目的であることがわかった。村には、牛5頭で農機具を購入できる中でも牛を優先する農家も存在しており、牛が大事にされていないという根拠は全くないが、実際には、牛の頭数が減少しており、堆肥の原料となる牛糞が減少しているため、化学肥料が増加している事実もある。

 

3-1-2:考察
 このことから、農業は着実に機械化が普及しており、牛の需要が減少していることが示唆され、将来的には、農業分野で牛が利用されることはなくなることが考察される。一方で、現在のカンボジア農村部では、牛が重要な現金収入の手段になっていることから、牛の価値は大きいものと考えられ、牛が減少する現状に見合った現金収入の獲得手段が別に創出されることが必要になると考えられる。その参考として、現在カンボジアでは、乳製品はほとんど輸入されている事実を受け、減少する牛の需要回復、単なる資金の代わりではなく、牛本来の特性にも着目し、乳製品の生産といった畜産業にも力をいれていくべきであると考える。JICAカンボジア事務所にて、農業関連プロジェクトの一環として、今後、畜産業への支援も他国と検討中であるということを伺ったため、今後の動向に注目することが必要である。現在のカンボジアの牛の飼育状況では、乾期には乾草しか食べられず、かなり痩せている個体が多かったため、可能であれば、トウモロコシや穀物を混ぜた混合飼料を給与する必要があると考えられるが、日本のように、食糧自給率問題が発生しないように考慮する必要もある。

 

3-2:グループテーマについて

3-2-1:結果
 開発の裏側の問題として、環境問題や、立ち退きの問題が浮上したが、JICAカンボジアでは、環境配慮ガイドラインや、立ち退きに関する制度を整えており、問題が発生しないような対策がとられていることが明らかとなった。同時に、立ち退きの際の住民との私情的な衝突といった、日本のような先進国でも起きている問題もあり、全世界共通の問題点が浮き彫りになることで、日本にも多くの課題があることを再認識した。

 

3-2-2:考察
 このプログラムを通して、カンボジアの人々は情報網や教育が発達していないことを含め、現在の生活における問題提起や、解決策の模索などを積極的に行わない人が多いことが明らかとなったため、支援の前提として、支援側からの提案があることを提起し、開発の裏側という漠然とした言葉の定義づけを、その開発・支援が持続的か非持続的かとし、非持続的開発を開発の裏側の悪い面とした。また、支援者からの提案を受け、技術支援を受けるカンボジア国民が、その後もその支援を活かした継続的活動を行うのか、それを受容するだけで一時的な活動として終えてしまうのか、この2つの経路で考え、その支援が持続的な支援か否かを考察しようと試みた。非持続的な支援の例としては、学校建設の一例であるが、建設後2年もしないうちに廃校となった学校が存在することが挙げられる。これは、学校の立地、生徒数の把握、教師の不足など様々な要因を考慮せず、不足している校舎を建てることを優先してしまったことが原因と考えられる。現在、カンボジアでのJICAの学校建設事業には、都市部に高層の学校を建設する事業がある。カンボジアの教育水準は、ポル・ポト政権以降低下しており、教師の学力も未熟なため、質の濃い授業を行うための事業が行われていること、教室が不足しているため、午前と午後の2部制で授業を行っている背景があることを述べておく。学校建設と言えば、インフラの未整備な地域への事業ととらえがちであるが、国の発展とともに、都市部では農村からの出稼ぎや人口流出によって若年層の増加、子供の人口増加が考えられ、学校の需要が増加するが、土地の減少、地価の高騰が生じており、今後は学校の建設が難しくなる可能性を受け、この事業が行われている。都市部への学校建設に伴い、ハード面だけでなく、教育の質向上を目指した支援を行うことが重要であると考えられる。一方、持続的な支援の例としては、日本橋のようなインフラ整備で、多くの人が現在も利用し、交通の改善が行われた例が挙げられる。このインフラ整備を考える際、結果としてはプラス面が多いが、建設時には住民の立ち退きや、フェリーや港周辺の市場で生計を立てていた住民の生活が犠牲になるという問題が生じた。JICA職員の方からお話しを伺い、建設に際して立ち退きを余儀された住民に対しては、必要最低限の生活が送れる程度には支援を行っているということが判明した。中国などの支援によって開発が行われた場合には、このような支援制度は整っておらず、大変な被害が出る可能性があることも判明した。このことから、支援をビジネスとしてとらえ、利益を追求するあまり、住民に対する配慮が欠ける支援は一方的であるということが言える。逆に、住民との折り合いもつけ、技術支援も行うことによって、現地の人々で修理、管理、維持ができる状態にまで持って行くことが持続的支援であると言える。

 

4)結論

 今回のプロジェクトを通して、国際協力の難しさを改めて感じた。何をもって発展途上国と言い、何をもって先進国と言い、何をもって支援する側、される側の線引きが行われるのか等、普段深く考えてこなかったことについてじっくり考える良い機会になった。また、先進国で行われている事業形態をそのまま発展途上国に適用することが正しいのかどうかなども考えさせられた。国際協力とは、常に変動するものであり、各個人の立場によってもとらえ方が多様であるため一概に定義することは困難であると実感した。私が国際協力において大切にしたいと考える点は、常に現地の人の立場に立って物事を捕えることである。技術が劣っているから、知識が不足しているからという理由で一方的に何かを提供するだけでなく、本当に現地の人々がそれを望んでいるのか、それを普及することによって現地の人々の生活はどのように変化するのかをしっかり把握し実行することを心掛けたい。しかし、別の視点から見たときに、ビジネス目線で何か供給することによって現地の人々に対する刺激や発見が生まれ、発展につながるのではないかと思える部分もあったため、今後は、そういった視点からも物事を捕える意識を持とうと考える。

 

参考文献一覧

カンボジアの畜産事情
lin.alic.go.jp/alic/month/fore/2001/nov/rep-sp.htm
カンボジアで見た牛の民俗資料
www.isop.ne.jp/atrui/ushi/05_kikansi/20-c.html
カンボジアの家畜飼育へ
http://yk8.sakura.ne.jp/ADC-1/Pages/Cambodia-J/Cambodia-tips08-2J.html
社団法人石川県畜産協会 糞尿処理の実際
ishikawa.lin.gr.jp
海外駐在員レポート カンボジアの畜産事情 シンガポール駐在員事務所 小林誠、宮本敏行 lin.alic.go.jp
乳牛
Wikipedia
乳牛の種類
moumoumou.fc2web.com/kind-of-bovine.htm
カンボジア国別評価報告書(2006/03)
http://www.mofa.go.jp
カンボジアの開発問題-メコン・ウォッチ
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia.html
国別援助方針(外務省)
http://www.mofa.go.jp/…/gaiko/oda/s…/kuni_enjyo_kakkoku.html
国別データブック(外務省)
http://www.mofa.go.jp/…/shi…/kuni/13_databook/pdfs/01-02.pdf
農村低所得者層生活向上活動 雌牛貸与ボランティア活動(2014/08)
財団法人国際青少年研修協会 kskk.or.jp

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