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Africa Veterinary Epidemiology Veterinary Communication

獣医疫学/Veterinary Epidemiology

 

 

 平成25年度卒業論文集を作成しました。


興味のある方は門平までご連絡ください。

 

オーストラリアと日本のジュゴン研究

 宮崎七奈衣

ジュゴン(Dugong dugon) は生息環境の変化による影響を受けやすく、生息数の減少が世界的に心配されている。日本では、沖縄に多数生息していたが、近年は数頭が確認されるのみである。一方、オーストラリアでは研究及び保護活動が積極的に行われており、安定した生息数を維持している。本研究の目的は、オーストラリアと日本におけるジュゴン研究の現状をまとめることである。文献調査、沖縄名護市の嘉陽の浜で行われたジュゴン食み跡観察会への参加、および鳥羽水族館飼育関係者へのヒアリングを行った。オーストラリアでは、野生のジュゴンを用いた多様な生態研究が行われていた。一方、嘉陽の藻場ではジュゴンの食み跡が確認されており、少なくとも1頭のジュゴンが餌場として利用していることが知られている。鳥羽水族館はジュゴンの長期飼育に成功しており、尿中プロジェステロン値測定による発情周期の研究も行っていた。オーストラリアの研究方法及びその成果は、日本でも参考にできることが多い。しかし、日本において何よりも重要なことは、野生のジュゴンの生息数の回復である。飼育下のジュゴンについては、鳥羽水族館で先進的な研究が行われており、継続して研究及び保護が行われるべきであると考える。

 

北海道における羊肉生産を妨げる繁殖要因に関する研究

南 優紀

現在の日本における羊の飼養頭数は14,184頭であり、羊の頭数が最大であった1957年の944,940頭と比べるとその数は激減している。世界的にみても日本の羊の飼養頭数は圧倒的に少ない。それに加え現在の日本の羊肉自給率は0.47%と低い数字であり、国内の羊肉生産が追い付いていないのが現状である。本研究の目的は、国内の羊肉生産を妨げている要因を繁殖管理の面から明らかにすることである。北海道内の羊牧場5戸で聞き取り調査を行い、繁殖に関するデータの収集を行った。受胎率、産子率および生存率の平均は95%、170%、88%で、農家間での違いはみられなかったが、ひとつの農家では年により受胎率に大きな差があった。また、子羊の生存率と分娩事故においては負の相関(p<0.05)がみられた。5戸すべてで季節繁殖を行っていたが、2戸では季節外繁殖も行っていた。季節による繁殖能力の差は見られなかったが、通年出荷が可能であること、および雌羊の受胎機会が増えるという面で、季節外繁殖の生産効率は高いと考えられる。農家ごとの管理方法の違いが顕著にみられたことから、季節外繁殖など効率のよい繁殖管理技術の斉一化が、これからの日本の牧羊業の発展に寄与するかもしれない。

 

知床のエコツーリズム
 −斜里町ウトロの観光船・シーカヤックツアーの評価−            

大竹大樹

近年、知床では新たな観光形態としてエコツーリズムが推進されている。知床の観光の中でも、斜里町ウトロ沖での観光船やシーカヤックによるツアーは観光客への人気が高く、この観光船やシーカヤックのツアー事業者の意識が、知床のエコツーリズムの推進に重要な役割を持つと考えられる。そこで実際にどの程度エコツーリズムの理念に基づいたツアーが行なわれているのか事業者を評価することにした。「地域振興」と「環境保全」に関する評価項目を計9つ設け、事業者から直接聞き取りを行い、項目ごとに点数をつけた。その結果、ツアー事業者全てでかなり低い評価点数となった。つまり、斜里町ウトロの観光船やシーカヤックのツアーは、全体的にエコツーリズムの理念に基づいて行われていないと思われる。特に、地域の文化や歴史、自然環境の価値を観光客に伝えるという教育的なガイドや、地域住民との交流、自然環境を保全するための自主的な取り組みがほとんど行われていなかった。知床で今後より一層エコツーリズムを推進していくためには、ツアー事業者がもっとエコツーリズムの理念を理解し、それに基づいたツアーを計画・運営していく必要があると考える。

 

食用となるシカとイノシシにおける志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の有病率の推定

黒田 裕介

近年シカやイノシシなどの野生獣の肉を有効活用しようとする活動が増えている。一方、人がその肉を食べることで食中毒や感染症に罹る事例も報告されている。野生動物由来食肉の喫食による食中毒の発生を減らすためには、原因となる細菌の有病率などの疫学情報が必要となる。食中毒の原因菌となる4つの細菌(大腸菌群、赤痢菌、サルモネラ、カンピロバクター)の糞便中の有無を検査したデータを入手することができた。この検査結果によると大腸菌群以外はすべて陰性であった。そこで本研究では、O型抗原陽性大腸菌群である志賀毒素産生性大腸菌(STEC)に注目し、その有病率を推定し、年齢、体重、性別などの個体レベルと地域や飼養管理方法などの集団レベルでの要因が有病率に関連するのかどうかを分析することが目的である。分析には、A、B、C、Dという4つの都道府県で採取された野生のシカ153頭(Cのサンプルなし)とイノシシ137頭(Dのサンプルなし)の糞便検査結果を用いた。狩猟で捕獲されたシカの有病率では、A(36.7%)が有意に高かったが、養鹿場にいたシカの有病率(50%)のほうがさらに高かった。このように、シカの有病率は地域と飼育方法により異なったが、イノシシの有病率には地域差はなくシカより低かった。また、個体レベルの要因には有意差はなかった。シカの有病率が高くなる理由として、STECが反芻動物の大腸内で長期間生育でき、かつ排菌期間が長いこと、また、養鹿場では個体同士の接触が多くなることが考えられる。 


アライグマ生息調査における餌トラップの有用性

松田奈央

外来種による被害が多く報告されるようになった。中でもアライグマ(Procyon lotor)は全国に生息域を広げ、農作物を中心に多くの被害をもたらしている。こうした被害を減少させるためにも速やかな防除が有効であるが、効率的に行うにはその地域のアライグマの実態を調査することが必要である。そこで本研究では、アライグマの生息を確認する際に餌トラップが有効であるかを検証し、効率的な防除につなげるための方法を考えることを目的とした。餌トラップはアライグマの捕獲ではなく生息確認をするためのもので、今回は十勝総合振興局の委託調査で用いられた餌トラップを参考として作成した。調査は更別村と中札内村を調査地として平成25年9月初めから10月半ばまでの約1カ月半、両村合わせて10か所に餌トラップを設置し反応を見た。誘引餌を含めトラップに何らかの反応が続く場合は自動撮影カメラを設置し、反応元の確認を行った。今回の調査でアライグマによる反応は見られなかったが、キツネやタヌキといったアライグマ以外の動物によって餌トラップに反応が出ることもなかった。この結果から、アライグマ以外の動物による誤反応は極めて少ないことが分かった。またこのトラップには、安価で容易に作成できる、大量に用意でき気軽に試すことが可能という利点がある。よって、箱ワナを設置する前段階でこの餌トラップを使用することでアライグマの生息域を特定でき、混獲の防止、効率的な捕獲につなげることができると考える。

 
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