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Africa Veterinary Epidemiology Veterinary Communication

獣医疫学/Veterinary Epidemiology

 

 

バイオセキュリティーと蹄病予防のための飼養管理方法
平成20年度成果報告書作成しました。


興味のある方は門平までご連絡ください。

 

ケース・コントロール研究手法を用いた北海道別海町における牛ウイルス性下痢ウイルス感染症発生に関係するリスク要因の研究

梅本理恵

【目的】ウイルス性下痢ウイルス(Bovine viral diarrhoea virus:BVDV)感染症は、主に胎児感染で持続感染牛(PI牛)が誕生することにより、継続的にウイルスが伝播し、牛の健康だけでなく生産性にも悪影響を及ぼす。国レベルでのBVDV感染症防止対策が行われていない日本では、北海道・別海町のように市町村レベルで対策に取り組んでいる。本研究は、2006年から2008年の2年間BVDV感染症対策を実施した別海町の協力を得て、ケース・コントロール研究を行い、BVDV感染症発生に関連する農家レベルでのリスク要因を探し出すことが目的であった。 【方法】 別海町において、過去2年間でBVDV感染症が発生した「ケース農家」15軒と発生しなかった「コントロール農家」29軒、計44軒の酪農家を対象とし、質問票による調査を行った。調査項目には、導入頻度、公共牧場の利用の有無、共進会への出陳、放牧地の野生動物の存在、獣医師による医療器具の再利用など、BVDV感染に関連するリスク要因を含めた。そして、ケース農家とコントロール農家、2つのグループ間でのリスク要因の分布割合や平均値を、統計学的手法を用い比較検討した。 【結果】 BVDV感染症発生に関連するリスク要因は、牛の導入(P<0.05、オッズ比=3.8)、育成牛舎の除糞頻度(P<0.005、オッズ比=6.1)、外来者用の施設入り口踏み込み消毒槽の設置(P<0.01、オッズ比=7.6)、牛舎内におけるカラスの侵入(P<0.05、オッズ比=7.4)、牛舎内における猫の侵入(P<0.05、オッズ比=4.9)、そして、動物侵入防止対策の実施(P<0.01、オッズ比=11.4)であった。以上の結果から、別海町でBVDV感染症を防止するために生産者は、1)BVDV感染症に対する意識を向上させ、2)導入時の検査・隔離を実施し、3)育成牛舎の週1回以上の除糞を励行し、4)外来者用の施設入り口踏み込み消毒槽を設置し、5)動物侵入防止対策を実践すべきであると推奨したい。


酪農家を取り巻くバイオセキュリティ
―北海道・別海町における質問票による調査―

児玉 愛実

 【目的】酪農家レベルでのバイオセキュリティとは、病原性微生物の農場内への侵入を防ぎ、かつ、農場内の病原性微生物の農場外への拡散を阻止するために必要な衛生管理対策のことである。サルモネラやヨーネ病など、特定の疾病を対象としたバイオセキュリティに関する研究は、日本でも多くなされている。しかし、最も効果的なバイオセキュリティとは、個々の酪農家特有の問題解決につながる農家レベルでの衛生対策の実践である。本研究の目的は、質問票を用いて北海道別海町の酪農家におけるバイオセキュリティの実情や実践頻度などを調査することにより現状を分析し、問題点などを探りだすことである。 【方法】 飼養形態、管理方法や衛生対策などバイオセキュリティの実態を調査するために必要な質問表を作成し、別海町役場と4つの農協の協力を得て、44軒の酪農家を対象に聞き取り調査を実施した。また、各農協が実践するバイオセキュリティ対策についても情報を聴取した。 【結果】 搾乳牛と接触がない施設で育成牛や哺乳子牛を飼育し、牛舎入口の消毒槽を設置している農家の割合は8割であったが、牛舎通路への石灰散布を実施する農家は全体の約6割である。一方、酪農場内に入る人や車両は8割以上の農家で制限されておらず、車両タイヤの消毒である道路への消石灰散布を行っている農家は14%と少なかった。また、半数の農家で牛が導入されているが、導入牛の隔離はほとんどされていないことや、動物の侵入防止対策をしている農家は38%と少ないなど、今後対策の強化が必要となる項目が浮かび上がった。農協ごとの比較では、出生子牛と母牛を離す時期や除糞頻度などで違いがみられた。ある農協では間接的に病原性微生物と接触する機会が多い農家の割合が高かったが、毎年全戸の牛舎環境を点検し、担当者が農場を訪れる際は消毒液を持ち歩き、長靴や車両タイヤの消毒を心掛けるなど衛生管理対策が徹底されていた。このように、農家を指導する立場にある農協がバイオセキュリティに関する積極的な指導を行うことも、酪農家レベルでの問題解決につながると考えられる。


富良野地域における乳用牛の趾皮膚炎・蹄底潰瘍発症に影響を与える農家レベルでの要因の研究

宗宮 光

【目的】搾乳牛にとって蹄とは、自らの巨体を支える土台であり、蹄の健康は生命維持活動の必須条件である。その蹄が健康を損ない蹄病を患うことは、牛の生産性低下や治療費増加による経済的負担を招くと同時に、扱いづらい牛は酪農家の労働的負担ともなる。蹄病が発症する要因は、大きく分けると細菌感染、飼育施設と栄養管理の3つに分類できるが、蹄病のタイプにより発症原因が異なっている。本研究は蹄病のなかでも、細菌感染で発症する趾皮膚炎と、飼育施設の快適性や栄養管理が発症に影響する蹄底潰瘍の2つに焦点を当て、富良野地域の酪農家の蹄病有病率と飼育管理方法を調査し、蹄病発症に関連するリスク要因を探ることが目的である。 【方法】富良野市の削蹄業者である有限会社ライズが収集した蹄病データを元に、顧客農家の趾皮膚炎と蹄底潰瘍の平均有病率を算出した。また、北海道富良野市、中富良野町と上富良野町の20軒の酪農家を対象として、質問票を用いて著者自身が農家を訪問し、飼育管理方法の聞き取り調査を行った。主な調査項目は、(1)牛群基礎情報(平均飼養頭数や乳検データなど)、(2)施設環境(飼養形態や牛床の寸法など)、(3)衛生管理(敷料追加頻度や牛体の汚れ具合など)、(4)栄養管理(給与飼料の内容やサイレージ調整法など)であった。そして、各農家の趾皮膚炎と蹄底潰瘍の平均有病率を指標とし、有病率が低い農家と高い農家の飼育管理方法を比較することにより、蹄病発症に関連するリスク要因を探った。【結果】趾皮膚炎の有病率が低い農家は、牛床に敷料を追加する頻度が多く、飼料の総給与回数が多い(P<0.05)。また、蹄底潰瘍の有病率が低い農家は、牛床の後端から前の障害物(前仕切りや胸板)までのスペースが広く、横仕切りがほぼ揃っており(P<0.01)、牛舎内の換気量が十分で、牛の乳房がきれいであった(P<0.05)。一方、蹄底潰瘍の有病率が高い農家では、乳成分の無脂固形分率が低く、繁殖障害を理由とする廃用牛が多い傾向がみられた(P<0.05)。これらの分析結果から、生産性を向上するためには、飼養管理方法の改善による蹄病の発症予防が重要であることが推測できた。

 
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