大学院畜産学研究科案内

1.目的

 本学大学院は,学術の理論及び応用を教授・研究し,その深奥を究めて文化の進展に寄与することを目的とする。


2.沿革

昭和42年6月1日 大学院畜産学研究科修士課程(獣医学専攻,酪農学専攻,農産化学専攻)を設置
昭和44年4月1日 草地学専攻,農業工学専攻を設置
昭和51年4月1日 畜産経営学専攻を設置
昭和53年4月1日 畜産環境学専攻を設置
昭和57年4月1日 酪農学専攻を家畜生産科学専攻に改称
平成 2年4月1日 大学院畜産学研究科修士課程獣医学専攻を廃止

岐阜大学を設置大学として本学,岩手大学及び東京農工大学を構成大学とする「岐阜大学大学院連合獣医学研究科(博士課程)」を設置
平成 6年4月1日 畜産学研究科修士課程の家畜生産科学専攻,農産化学専攻,草地学専攻,農業工学専攻,畜産経営学専攻及び畜産環境学専攻を畜産管理学専攻,畜産環境科学専攻及び生物資源化学専攻に改称          

岩手大学を設置大学とする「岩手大学大学院連合農学研究科(博士課程)」に構成大学として参加(構成大学:岩手大学,弘前大学,山形大学,帯広畜産大学)
平成13年4月1日 生物資源化学専攻を生物資源科学専攻に改称
平成16年4月1日 畜産衛生学専攻(独立専攻)を設置
平成18年4月1日 畜産衛生学専攻(独立専攻)を基盤に,博士課程畜産衛生学専攻(前期・後期)を設置

 3.専攻の内容


畜産管理学専攻

 動物生産を直接的に支える生物機能を遺伝情報の統計的解析や生殖工学,栄養・生産生理及び行動理論などの分野から科学的解明を図る生産学分野と,世界と日本の社会経済関係を正しく認識して,持続可能な畜産・農業システム発展の解明・創造を目指す経営・経済学分野との二つの研究・教育分野から構成されており,相互に密接な学際的連携を保ちながら,高度な専門的知識と技術を修得した技術者・研究者養成を目的としている。
本専攻は以下の5つの修士講座からなっている。

■共生家畜システム学

この講座は,持続可能な畜産の生産技術・社会経済システムの解明にかかわって,二つの異なる教育研究分野から成り立っている。一つの共生家畜管理学分野は,家畜と環境,家畜と行動,泌乳生理,家畜管理システムなど家畜・自然環境・人との共生に基盤をおいた家畜管理に関する高度な教育・研究を行う。もう一つの共生経済システム学分野では,農業・農村における物質循環を考慮した経済システム,各種のバイオマス利用産業及び食品安全のリスクコミュニケーションに関する高度な教育・研究を行う。

■家畜育種増殖学

研究分野としては,家畜育種学と家畜増殖学の2つがあり,研究課題は以上のようなものがある。

  • ◎ 乳牛に関する育種システム,家畜の量的形質の遺伝的パラメータの推定並びに家禽の育種に関する教育と研究を行う。
  • ◎ 哺乳動物卵子の凍結保存,体外成熟,体外授精(顕微授精),体外培養による胚発生に関する理論と応用について教育・研究を行う。また,凍結精液の新たな希釈液の開発と人工授精による受胎率向上に関する実践的研究教育を行う。
■家畜生産機能学

家畜生産の基礎となる動物体の生理・栄養・行動とそれらの変動に関与する飼育環境的要因の解析を中心に,家畜の生産方式を効率的に管理・制御するための理論と応用について教育研究する。
本講座の主要研究課題は,家畜の生体情報とその利用,家畜生産と内分泌の関係,貯蔵粗飼料の養分価変動,反芻胃内における飼料成分の代謝とその制御,穀物飼料節約型の牛肉生産技術の研究などである。

■畜産経営管理学

農業・畜産の経営管理,計量分析,診断分析,経営計画,情報処理などの基礎である畜産経営学,計量経済学,経営計画論,数理モデル,多変量解析,欧米ビジネスの理論と応用に関する高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,農業・畜産における意思決定や計画モデルの理論と応用,経営情報の収集・処理・評価に関する基礎理論と応用,欧米諸国のビジネス社会に関する研究などである。

■畜産資源経済学

農業経済学を基礎として,畜産資源経済学,農業政策学,農業貿易論,国際農業開発論,食品経済論における理論と応用について,高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,農畜産物の生産・流通,資源・消費者・アグリビジネスに関する食料政策,アジアの畜産開発に関する研究などである。

畜産環境科学専攻

農学・畜産学と環境科学の基礎をなす専門分野であり,主に次の3領域について自然科学的,農学的手法を基礎とした教育研究を行い,畜産環境に関する高度な専門家及び研究者の養成を目的としている。

  1. 草類・飼料作物及び畑作物の改良と畑・草地利用の高度化に関する理論と応用技術並びに自然生態系と農生態系の保護
  2. 土地利用型畜産の基礎である耕地土壌と水利用を含めた農地環境の保全・維持・改良
  3. 農畜産機械並びに畜産施設の開発・利用に関する理論と応用技術

本専攻は,次の5つの修士講座からなっている。

■作物科学

畑作物と牧草の改良と生産の基礎となる植物遺伝学,植物育種学,植物工学,資源植物学,飼料作物学及び植物生産学の理論と応用に関する高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,作物の耐冬性に関する遺伝育種,遺伝子工学及び細胞工学による作物の耐病性並びにストレス耐性の解析,染色体工学によるコムギ種子胚乳デンプンの解析,分子マ-カ-によるQTL解析及びコムギの穂発芽に関する研究などである。

■草 地 学

草地生態学を基礎とし,草地生産学,草地利用学,飼料資源科学,植物遺伝資源学に関する理論と応用について高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,草地の生産と維持管理,草地の利用法,未利用資源の飼料としての利用,飼料資源の保全と合理的な利用方法,草地雑草の生態と防除に関するものである。

■生態系保護学

自然及び農業生態系に係わる植物生理学,植物生態学,動物生態学,野生動物管理学,畜産害虫学,昆虫生理学について理論と応用を教育・研究する。
本講座の主な研究課題は,牧草の再生機構,鳥類・哺乳類・昆虫の分類・生理・生態,環境指標としての昆虫や鳥獣の利用,草地・畜産における残存林の生態など,生態系の相互作用と保全に関するものである。

■土地資源利用学

土地利用型農業の基礎である地盤情報学,気象情報学,土地利用学,土壌化学,土壌生成分類学,農地工学,農業水利学,農業造構学の理論とその応用に関する高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,土地資源の構成要素である土壌の成因・特性及び機能に関連した基礎知識をもとに,資源環境と土壌鉱物,有機・無機成分とのかかわりを究明する。さらに,土地基盤としての地盤情報,表層地質及び農林業における土地の高度利用と評価法を研究する。また,土木的手法を用いた理論技術をもとに,農業の生産基盤と生活環境を向上させる総合的な判断力を養成する。特に気象情報,灌漑,排水,土壌侵食,土壌凍結,凍上などに関する土地改良的諸問題を研究する。

■生物生産システム工学

基礎機械工学,農業機械学及び畜産機械学を基礎とし,農業トラクタ工学,農作業機械学,畜産施設学及び農産加工機械学の理論とその応用に関する高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,農用車両タイヤと土壌間の相互作用に関する土壌力学的研究,栽培・収穫の技術や家畜管理技術への工学技術の導入による農畜産技術の高度化及び農産物・同副産物の利用とその品質向上に関する工学的研究並びに農畜産廃棄物の有効利用技術の研究などである。

生物資源科学専攻

生物生産物などの生物資源について,それらの生体における機能の解明,牛乳及び乳製品・食肉及び食肉製品・農産物へのバイオプロセスの応用及び食品関連のバイオインダストリーに関する高度な技術などの修得に幅広く対応できる人材を育成し,広く社会に貢献することを主眼としている。そのため,例えば組織培養,バイオリアクター,醗酵工学,醸造工学,食品工学などを主要な対象分野とし,さらにそれらの背景となる学問分野,すなわち生化学,有機化学,物理化学など基礎知識を基にして修得できるようカリキュラムの構成を図っている。
本専攻は,次の3つの修士講座からなっている。

■応用生命科学

生物化学,生物工学を基礎として,生物資源が示す生命現象のメカニズムの解明,有用遺伝資源の検索・保存とその高度利用及び糖鎖・脂質工学を応用したライフサイエンスについての教育・研究を行う。
本講座の主な研究課題は,生体における天然生理活性物質及び栄養化学成分の機能解析,未利用生物資源の高度利用に関する研究,植物の低温適応能と膜脂質との関連性の解明並びに低温抵抗性植物の分子育種への応用,食品の機能性,特に抗酸化能,ラジカル消去能,抗血小板作用の解析と応用,動物・植物・微生物のスフィンゴ脂質が担う生物機能の解析などである。

■応用分子生物学

分子生物学の基礎的な理論を深く理解しつつ,遺伝子工学を中核としたバイオテクノロジ-を実学的に利用すること,すなわち食糧あるいは有用資源の有効利用に発展させうるような微生物や農作物の育種や医療技術を確立することを主眼に教育・研究を行う。
本講座の主な研究課題は,生理活性物質の構造-活性相関探査法に関する生物有機化学的研究,好冷菌の生化学的・分子生物学的研究,高等植物の体細胞胚形成系を用いた分化の分子生物学及び形態学的研究,窒素固定菌を用いた微生物-植物相互作用機構及びその有効利用に関する分子生物学的研究などである。

■生物資源利用学

牛乳及び乳製品,食肉製品や農産物を合理的に加工・保蔵するための基礎となる畜産食品保蔵学,酪農食品科学,食品工学,畜産食品生化学,品質管理及び食品機能化学などの理論と応用に関する高度な教育と研究を行う。
本講座の主な研究課題は,食肉の熟成中における理化学的性状,筋肉タンパク質の死後の変化,乳業用乳酸菌の産生する生理活性物質,乳中の糖質の化学構造・生物機能並びに生合成,原料牛乳の理化学的及び微生物学的品質と加工特性,澱粉の物理化学特性及び馬鈴薯の低温増糖機構に関する研究などである。

畜産衛生学専攻(独立専攻)

現在,我が国では,国際的な自由貿易の進展から,動物由来食品(動物及び乳・肉等)の安全性確保が緊急課題となっている。本独立専攻は,本学における「21世紀COEプログラム」を中心とした「畜産衛生学分野」における世界最高水準の研究組織を基盤として,「動物由来食品の安全確保」のための国際的高度専門職業人養成に特化した実践的教育研究を行う。
本独立専攻では,畜産由来食品の安全性評価と生産から加工・流通に至る衛生管理について多元的な視点で捉えることを目標としており,このため,農畜産学分野の学部卒業生等に対しては,従来,獣医学分野で担っていた公衆衛生分野の観点から知識を補完し,また,獣医学分野の学部卒業生等に対しては,食品や農畜産物の生産や「食」を取り巻く最新の情報等を提供することにより,「食の安全確保」を担う専門家として問題解決型の卓越した研究能力と幅広い見識を備えた人材養成を行う。
本専攻は次の5つの修士講座からなっている。

■食肉乳衛生学

生物科学の最先端の知見と手法を駆使して,人類の健やかな生活に寄与する安全で優れた畜産食品を安定的に供給し,さらに効率的活用を図るために,原材料から加工,さらに製品の摂取に至るまでの全ての工程で危害を及ぼす可能性のある微生物,人工化合物等の分析,制御,管理方法および生体応答の実際について総合的に教育・研究を行う。

■家畜生産衛生学

これまでの効率を優先した育種・繁殖や飼養技術から,効率も考慮した健康で元気な家畜を作出していくための技術開発や理念について,基礎的な理論と実験実習を中心とした実践的考察を行い,畜産の生産現場における衛生に主眼をおいた教育・研究を行う。

■食品衛生経済学

食品の安全性と安心の確保及び食料生産向上のための,食品衛生の経済理論とその制度設計理論,農場・食品加工場の衛生管理システムの経営的評価とマネージメント,国際貿易体制下における動植物検疫制度の経済評価と制度設計,および食品の統計的リスク分析手法に関する教育・研究を行う。

■食品有害微生物学

食品の安全性確保及び食料の生産性向上のために,「農場から食卓まで」全ての段階での危害要因を科学的に解析し,危害の排除法を構築するための技術やシステムの開発に関する教育・研究を行う。特に,公衆衛生上問題となる細菌,ウイルスによる食品媒介感染症,抗生物質・農薬の残留,家畜生産病などを対象とし,分子疫学や分子生物学,免疫学などを駆使して実施する。

■人畜共通感染症学

寄生虫,原虫などの寄生体と宿主の相互作用を,双方の個体群から分子に至る様々なレベルで理解し,これに基づいた治療・診断法に関する教育・研究を行う。

4.課程の修了及び学位の授与

(1)畜産管理学専攻・畜産環境科学専攻・生物資源科学専攻

本学大学院畜産学研究科修士課程に2年以上在学して所定の単位を修得し,かつ,必要な研究指導を受けた上,学位論文の審査及び最終試験に合格した者を課程の修了者とし,修士(農学)の学位を授与する。ただし,在学期間に関しては,優れた業績を上げた者については,研究科に1年以上在学すれば足りるものとする。

(2)畜産衛生学専攻(独立専攻)

本学大学院畜産学研究科博士前期課程に2年以上在学して所定の単位を修得し,かつ,必要な研究指導を受けた上,学位論文(特定の課題についての研究の成果を含む)の審査及び最終試験に合格した者を課程の修了者とし,修士(畜産衛生学)の学位を授与する。ただし,在学期間に関しては,優れた業績を上げた者については,研究科に1年以上在学すれば足りるものとする。

5.教育職員免許状について

一種免許状を取得し,又はその資格を有している者が,本学大学院の課程において修士の学位を有するか,又は1年以上在学し,所定の単位を修得したときは,「農業」又は「理科」の教科について教育職員免許状(専修免許状)を取得することができる。
なお,「畜産衛生学専攻」(独立専攻)は教育職員免許状(専修免許状)は取得できません。

専攻別取得教育職員免許状の種類及び教科

専  攻 免許状の種類 免許教科
畜産管理学専攻 高等学校教諭専修免許状 農    業
畜産環境科学専攻 高等学校教諭専修免許状 農業又は理科
生物資源科学専攻 高等学校教諭専修免許状 理    科

6.社会人の受入れについて

生涯学習の一環として,大学等を卒業し教育界や官公庁あるいは企業等で活躍している社会人の間で,さらに高度な学識や技術を修得するために大学院へ進学しようとする気運が高まってきています。このような社会人にとっては,かつて大学等で学んだ学問よりも,卒業後の仕事や職場における経験を通じて培われた知識や技術が新鮮な学力として身についています。

帯広畜産大学大学院畜産学研究科では,このような向学の志を抱く社会人を受け入れるために,現役の学生に課す学力試験にかえて,社会人にふさわしい面接を主体にした特別選抜を行い,その資質と意欲を評価しようとする制度を設けています。   
社会人の大学院進学は,我が国が目指す高度な教育社会の実現に大きく貢献するでしょう。また,教育・研究機関や官公庁あるいは企業等にとって,所属する職員や社員の大学院におけるリフレッシュ教育は,それぞれの職場に新風を送り活性化を促すに違いありません。

大学院では,より専門的で高度な研究分野を専修することになります。出願に際しては,その専門性にかんがみ,入学を希望する専攻講座について熟知するために,専攻長とあらかじめ協議してください。

多くの職場において,この特別選抜による進学が可能となるような職員や社員を派遣する措置が講じられることを期待するものです。

 

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