帯広畜産大学

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本学原虫病研究センター井上昇教授が「アフリカ睡眠病の100円診断キット開発」に協力

 JST地球規模課題対応国際科学技術協力事業の一環として、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの鈴木定彦教授らが12月12日に発表した「結核、アフリカ睡眠病の100円診断キットを開発」の研究に本学原虫病研究センター井上昇教授が協力しました。

 JST地球規模課題対応国際科学技術協力事業の一環として、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの鈴木定彦教授らは、発展途上国に実装可能な安価で操作が簡便な結核ならびにアフリカ睡眠病の迅速診断法を開発し、ザンビア共和国へ技術導入しました。
 アフリカ睡眠病の従来検査は、血液中のトリパノソーマ原虫を顕微鏡下で見つけることしたが、感度が低く早期発見ができないことから、高感度で迅速な診断法の開発が望まれていました。
 本研究グループは、帯広畜産大学原虫病研究センター井上昇教授らが2003年に論文発表したLAMP法によるアフリカトリパノソーマ遺伝子の簡易迅速増幅検出法を応用する事により、1検体あたり約100円で迅速に臨床検体中の結核菌あるいはトリパノソーマ原虫の遺伝子を検出する技術の開発に成功しました。
 本技術により、結核ならびにアフリカ睡眠病の安価な早期診断が可能となり、適切な治療が発病早期から開始される様になります。これにより、治療率が向上し、当該感染症による死亡者数の低減につながるとともに患者数の大幅な低減にも貢献します。
 本研究は、JSTの地球規模課題対応国際科学技術協力事業の一環としてザンビア共和国保健省大学研究教育病院ならびにザンビア大学獣医学部との共同プロジェクトとして、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの梶野喜一准教授、北海道大学理学研究院の大栗博毅准教授、帯広畜産大学の井上昇教授、藤田保健衛生大学の井平勝教授ならびに鳥取大学の松葉隆司講師の協力のもとに実施したものです。
 なお、井上教授がUniversity of the Free State, Qwaqwa campus(南アフリカ)と実施しているアフリカトリパノソーマ症の簡易迅速診断法開発と流行状況調査に関する国際共同研究は、地元紙(Express Eastern Free State, 2013年12月11日発行)に取り上げられ また南アフリカ放送協会(SABC)ラジオの取材を受けるなど、注目されています。

       参考   北海道大学「お知らせ・プレスリリース一覧」  

<研究の背景と経緯>
 近年、結核注1)、伝達性ウシ海綿状脳症、SARS、ニパウイルス、ハンタウイルス、ヘンドラウイルスや新型インフルエンザウイルス感染症、エボラ出血熱、肺ペスト、レプトスピラ病などの新興・再興感染症が世界各地で人類を脅かしています。
 中でも結核は人類の3分の1が感染し、年間約900万人の新規登録患者と約140万人の死者を出している疾患であり、その対策が切望されています。特にアジア、アフリカ諸国では数多くの患者が見られ、全世界の結核患者の4分の3がアジア、アフリカ諸国に集中していると言われています。アフリカ睡眠病は、サハラ砂漠以南のアフリカに見られる疾病で、年間の死亡者は約5万人と推定されています。高頻度にマラリア等の他の熱性疾患と誤診され、結果として不適切な治療による重篤化につながる例が少なくないため、早期の鑑別診断が重要となっています。
 この様な状況下では、安価で簡便な診断法の開発と普及による診断結果を基にした適切な治療が不可欠であり、かつ急を要していました。しかしながら、従来からの結核確定検査は喀痰中の結核菌の培養によるものでしたが、操作が煩雑である事、実験室感染のリスクが伴う事、結果の判定までに約1ヶ月と長時間を要する事のために簡便、安価で迅速な確定診断法の開発が望まれていました。一方、アフリカ睡眠病注2)従来検査血液中のトリパノソーマ原虫を顕微鏡下で見つけることでしたが、感度が低いため早期発見ができず、高感度で迅速な診断法の開発が望まれていました。

<研究の内容>
本研究グループでは、発展途上国でも実装可能な、安価、簡便かつ高感度で迅速な診断法の開発をめざして研究を進めた結果、以下の成果を得ました。

  1. 試験管内等温遺伝子増幅法であるLAMP法注3)を応用する事により、簡便、安価で迅速に臨床検体中の結核菌あるいはトリパノソーマ原虫の遺伝子を検出する技術を開発しました。
  2. コールド•チェーンが完備されていない発展途上国においても実装を可能とするための全ての試薬を乾燥状態にした診断キットを1検体あたり約100円の低コストで開発しました。
  3. 検査結果の判別をより鮮明にするための低コスト小型蛍光検出器(約3000円)を開発しました。

<今後の展開>
本技術により、結核ならびにアフリカ睡眠病の早期診断が可能となり、適切な治療が早期に開始されることになります。早期治療が可能となれば、当該感染症による死亡者数の低減につながるとともに患者数の大幅な低減にも貢献します。
現在は、ザンビア共和国での結核ならびにアフリカ睡眠病診断の公定法としての承認を受けるための同国政府保健省主導の評価試験の段階に入っております。  

<用語解説>
注1)結核
結核菌によって引き起こされる感染症で、世界で約20億人が感染しているものと考えられている。2011年の世界の新規患者は約900万人、死亡者は約140万人、我が国の新規患者は22,681人、死亡者は約2,166人と報告されている。

注2)アフリカ睡眠病
ツェツェバエが媒介する寄生性原虫トリパノソーマによって引き起こされる感染症です。サハラ砂漠以南のアフリカに見られる疾病で、年間の死亡者は約5万人と推定されています。早期に発見した場合には治療できますが、中枢神経症状を呈した患者の致死率はほぼ100%と言われています。我が国での発生はありませんが、アフリカからの帰国者での発生が疑われた場合には診断が必須です。

注3)LAMP法
Loop mediated isothermal amplification法、栄研化学株式会社が開発した等温で遺伝子断片を大量に増幅する方法。

<お問い合わせ先>
帯広畜産大学 原虫病研究センター 井上昇教授 電話0155-49-5647


                   

 


























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