平成23年度入学式

 第63回畜産学部,第45回大学院並びに第52回別科草地畜産専修の入学式が,4月8日(金)午前10時から講堂において,関係者の列席のもとに挙行されました。式に先立ち,このたびの東日本大震災で犠牲になられた方々に黙祷を捧げました。

 入学式では,348名の入学者全員の呼名が行われ,入学が許可されました。次いで長澤学長から告辞が述べられ,入学者を代表して獣医学課程の比嘉 博人さんから宣誓が行われました。
  その後,ご来賓の同窓会会長および役職員の紹介があり,マンドリンサークルによる帯広畜産大学逍遥歌の流れるなか,式が終了しました。

 

以下に長澤学長の告示を紹介いたします。

   告 辞

 本日ここに、ご来賓、ご家族、教職員のほか、関係各位のご臨席を頂き、平成23年度の入学式を挙行できますことは、本学にとりまして大きな喜びです。本学に入学された348名の新入生の皆さん、誠におめでとうございます。

 皆さんが、これまで努力し研鑽を重ね、様々な困難を乗り越えて、本学に入学するという目標を達成されたことに対して、心から敬意を表します。また、その志を支えてくださった、保護者の方々、ご家族並びに関係者の方々に対しても、心よりお慶び申し上げます。

 今、十勝・帯広は、寒く厳しい冬が終わりを告げ、春の訪れを迎えています。新入生の皆さんの気持ちを鼓舞するように、キャンパス内のいたるところで、野鳥のさえずりを耳にし、エゾリスが走り回る姿を目にするようになり、木々たちは緑溢れるキャンパスづくりのために新芽を膨らませています。この豊かな自然環境は、本学の特色の一つです。例年と変わらない風景ですが、心の中は例年通りというわけにはまいりません。
 去る3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う、東日本大震災の中で、入学式を中止あるいは延期している大学も数多くある中で、本学が、本日、入学式を挙行できますことを幸いに思います。震災の犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に対して、こころからのお見舞いを申し上げます。現在、各方面からの支援活動が進められていますが、私たち一人一人が、被災された各地域の人々の復興への道のりを見守り続けるだけでなく、できうる限りの支援を続け、助け合うことが必要であると考えます。

 さて、本学の前身である帯広高等獣医学校は、今から70年前の昭和16年に創立されました。当時は、厳しい社会情勢の中、このような講堂や研究棟はなく、十分な設備もありませんでしたが、全国各地あるいは海外から132名の新入生を迎えて、帯広市内の北海道庁立十勝農学校で入学式が挙行されました。昭和24年には、学校教育法の改正により、新制大学として帯広畜産大学畜産学部が設置され、獣医学科および酪農学科に91名の入学者を受け入れています。その後、学科の新設あるいは再編を行い、平成20年度から現在の課程制に移行しています。
 別科(草地畜産専修)は、地域に密着した農学を学ぶことにより、地域社会の指導者となるような農業後継者を育成することを目的として、昭和35年に新設されました。
 大学院に関しては、昭和42年に、先端的な学術知識を有する高度専門職業人養成を目的として、大学院畜産学研究科修士課程が設置されました。また、平成18年には、BSEに端を発した食の安全に関する社会不安解消のために、我が国で唯一、食の安全確保を担う人材育成を目的とした、畜産衛生学博士の学位を授与する本学独自の大学院博士課程畜産衛生学専攻が設置され、現在に至っています。これらの教育課程を修了した同窓生の数は約1万5千人となり、農学および獣医学を中心とした、生命・食料・環境の分野で、国内はもとより、世界中で多彩な活躍をしています。

 今日の大学の社会的使命は、教育、研究と社会貢献の3つに集約されます。学校教育法によれば、大学の目的は、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的および応用的能力を展開させること」と定められています。また、「大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与する」と規定されています。

 平成16年には、全国の国立大学が法人化され、6年ごとに中期目標・中期計画を公表し、外部評価を受けることになりました。現在、わが国には大学が約760校ありますが、このうち国立大学は86校です。いずれも、大学運営には国から財政支援を受けています。本学の場合は、運営費の約半分が国からの財政支援です。大学が社会貢献を目的とした人材育成のための高等教育機関であること、また、国から多大な財政支援を受けていることから、国立大学の社会的責任は重く、社会に対する説明責任を果たす必要があります。

 中期目標・中期計画に掲げた本学のミッションは、「知の創造と実践によって、実学の学風を発展させ、『食を支え、くらしを守る』人材の育成を通じて、地域および国際社会へ貢献する。」ことです。農学、畜産学、獣医学は、実学を重視した学問分野であり、いわゆる、知の活動は「自ら労して、自ら食らう」私たちの生活に根ざしたものでなければなりません。
 また、本学の基本的なビジョンを4つ掲げています。一つ目は、「恵まれた自然環境を活かしつつ、潤いと活気があり、豊かな人間性を醸成できるような『学びあいのコミュニティ』を創出する。」2つ目は、「獣医・農畜産融合の視点から、幅広い見識と国際性を有し、実践力のある人材の育成を目指す。」3つ目は、「生命・食料・環境の分野に関し、地球規模課題の解決に向けて、トップレベルの学術研究拠点となることを目指す。」4つ目は、「創造的、学際的な実学研究の成果を社会に還元して、地域および国際社会の持続的発展に貢献する。」としています。
 これらのミッションとビジョンの達成には、本日、入学式を迎えられた皆さんの協力が必要となります。

 現在、食料生産分野に限らず、多様な分野において農業が注目されており、21世紀最大の成長産業とも言われています。また、現代社会が抱えている地球温暖化、食料安全保障、環境問題、エネルギー問題、感染症などの地球規模問題と「農業」は密接に関連しています。そこには、あらたなビジネスモデルの存在が示唆されているのですが、ビジネス以前の問題として、農学、畜産学、獣医学の学術貢献による地球規模問題の解決方策は、人類にとって喫緊の最重要課題であると言えます。現代の農学は遺伝子から地球環境まで扱う総合科学であり、人類にとって不可欠の学問でもあります。

 こうした情勢の変化と社会の期待に対応して、皆さんがそれぞれ固有の目標を設定し、これからの学生生活において、生命・食料・環境分野の専門知識、社会に通用する教養、社会情勢の変化や諸課題に対応可能な応用力やコミュニケーション能力を身につけ、人間的に大きく成長されることを期待します。

 このたびの大震災において日々報道される、被災地域の皆様が困難に怯むことなく復興に向けて歩む姿、自らを犠牲にして多くの人々を救った行動、危険を顧みずに原子力発電所の事故に立ち向かう人々の勇気などは、私たちに感動と希望を与えてくれます。
 新入生の皆様には、被災地の皆様と同じ気持ちを持って、課題や困難に立ち向かい、自らの夢の実現に向けて、あるいは地球規模課題の解決に向けて、大いに挑戦することを期待します。それが、被災地域の皆様へのエールになり、わが国における戦後最大の自然災害からの復興につながると信じています。

 とかち帯広は、日高山脈から始まる果てしない大空と大地の中で、一年を通じて美しい自然の息吹を満喫できます。このような恵まれた自然環境は修学環境としても、志高い皆さんの多様で個性的な夢と希望を迎え入れるのに相応しいものと考えます。
 最後に、皆さんが、志を高く持ち続け、悔いを残さない充実した学生生活を送られることを祈念し、告辞といたします。

平成23年4月8日
国立大学法人帯広畜産大学長
長澤秀行

 

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