食の安全確保に向けた教育研究組織の創設

大学院畜産学研究科畜産衛生学専攻 専攻長  宮 本 明 夫

 

我が国初の畜産衛生学専攻の新設

 平成14年度に21世紀COEプログラム動物性蛋白質資 源の生産向上と安全性確保― 特に原虫病研究を中心と して― が採択された。さっそく,COEの研究グルー プを中核として,本学の将来構想と中期計画(図1)に 沿った新たな教育研究組織の創設準備に入った。2年後 の平成16年度に「畜産衛生学独立専攻 博士前期課程」 を新設し,高度な研究レベルと活力ある研究スタッフに 支えられた国際舞台で活躍できる「食の安全の科学的な 確保」に関わるプロフェッショナルな人材育成がスター トした。特に前期課程では,大学院教育の実質化を徹底 させ,「食の安全」について,「農場から食卓まで」のフ ローに沿った分野横断的な実社会を見据えたカリキュラ ムを,獣医学と畜産学を融合させた教育組織で推進して いる。平成18年度には博士後期課程がスタートし,いよ いよ国際的な食の安全科学の教育研究システムの稼働が 始まった。同年度に,文部科学省の「魅力ある大学院教 育イニシアティブ」に本専攻の「食の安全に関わる高度 専門家育成プログラム」が採択された。本専攻では,大 学院生に対し当該分野において国際的な視野で常に良い 人間関係を構築することの重要さを体験させるべく,C OEプログラムの国際共同研究に参画してもらい,加え て,海外でのインターンシップを必修化して,国際感覚 の活性化に力を入れている。「食の安全」は実社会の問 題であることから,教育には実務者のリーダーや関連す る国際組織のメンバーなど,国内外からの協力を得て, 常にアップデートの問題を題材に議論をするスタイルを 貫いている。こういった一連の活動の結果,本専攻での 国際的な雰囲気と海外連携拠点の形成が着実に進んでい る。

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教育内容の特徴

 本専攻プログラムでは、「農場から食卓まで」のフローに沿った実学に根ざした教育内容をおこなっている。教育スタッフは、原虫病研究センター(全共)、大動物特殊疾病研究センター(学共)および畜産科学系のCOE研究グループのメンバーからなり、国際レベルの研究活動と密接に関係した以下の4つの特徴からなる教育プログラムとなっている(図1)。(1)教育効果を上げるため、1年を4セメスター制とし、各科目は2ヶ月間で集中的に履修する。(2)そのため、前期課程では総合型授業(講義・実習の一体化)を導入し、横断的な広い分野の要点を体験とともにインプットできるようにしている。(3)大学院生は教員と共同で、主に社会での実務者のリーダーを対象にしたワークショップを企画・運営し、ラボでの研究成果を社会に情報として提供する際の様々なノウハウを学ぶ。(4)後期課程では海外でのインターンシップを必修化して、国際的視点で、自分の関わる研究分野が社会にどのように貢献しているか、すべきかを強く意識できるようにする。本専攻では、3講座(動物医科学、環境衛生学、食品衛生学)、7分野を置き、連携しながら教育研究を推進している(図1)。

新しい大学院教育の効果

 本専攻では、COEプログラムの国際共同研究の枠組みを活用し、各海外連携拠点から特別講義の講師を招へいし、英語によるアップデートな話題を軸に、基礎・応用・実際の最新情報を取り込み、議論することを続けている(図2)。また、大学院生を海外の連携拠点に共同研究参画やインターンシップで派遣し、同時に連携先からの人材を本専攻にも受け入れ、若手人材交流を進めている。このような大学院教育プログラムを継続してゆくことで、以下のような成果が期待される。

    1. 国際感覚の備わった獣医・畜産分野を横断的に理解する「食の安全確保」専門家を輩出
    2. 食の安全分野の国内外ネットワーク構築
    3. 途上国畜産衛生レベルの向上によるボーダレス時代への対応
    4. 大学院教育実質化の人材育成成果の学内外への波及効果
    5. 教育・研究に対する第3者評価・助言(国際評価委員会)

     

    図1
    図2