食肉流通における衛生情報管理システムの構築

 

研究室 食肉衛生研究分野
Lab for Meat Hygiene 
事業推進担当者 関川 三男(Mitsuo Sekikawa),口田 圭吾(Keigo Kuchida),福島 道大(Michihiro Fukushima)
小嶋 道之(Michiyuki Kojima),三上 正幸(Masayuki Mikami)

 

研究要旨

 食肉流通における衛生管理を行う上で,特定危険部位 の徹底した除去は不可欠である。一般に牛枝肉は水の噴 霧による洗浄が行われているが,特定危険部位を除去す るには十分ではないことも想定されるため,新たに特定 危険部位の除去に適した枝肉洗浄装置を開発した。
  牛肉の生産性向上のために,しもふりの詳細な画像解 析結果を生産現場にフィードバックするシステムを構築 した。また,高精細枝肉横断面画像を撮影するためのミ ラー型牛枝肉横断面撮影装置を開発した。本システムは 十勝や全国数箇所の枝肉市場で応用され,生産者へのデ ータ還元ならびに育種への応用が行われつつある。
  家畜からの動脈やアキレス腱等の廃棄物を高付加価値 化する目的で,ラットに与えたところ,肝臓における脂 質代謝関連酵素の遺伝子発現を調節し,血中の脂質を改 善した。加熱処理した動脈やアキレス腱は血中脂質改善 に寄与する食材となりうることが示唆された。

特定危険部位の除去に適した枝肉洗浄装置の開発

 BSE がヒトへ経口的に感染する可能性が示唆され, 牛特定危険部位の完全な除去が求められている。そこで, 我々は,肉小片に脳組織を付着させ,種々の溶液を用い て洗浄効果を調査してきた。枝肉全体を効率的に洗浄す るための装置を開発し,その性能を調査することを目的 とした。
  洗浄に適したノズルを選択するために,豚肉小片に黒 色ペンキを塗布し,散布距離・時間等を変化させ,残存 するペンキ量を画像解析で求め洗浄効果を評価した。脳 組織の定量はグリア線維細胞酸性タンパク質を指標とす るELISA(r-biopharm)によった。設計した枝肉洗浄 装置は,下肢から頚部へ順次噴霧洗浄でき,圧力可変で, 洗浄液の跳ね返りを防止し,枝肉が回転する方式とした。 洗浄効果は,ノズルの諸特性や散布距離・時間に依存し, 実用的な30秒間,約70cm の条件では1.0 MPa 以上の圧 力が必要だった。調査したノズルではフラットスプレー チップの2種で良好な結果が得られ,それぞれ約1.0 MPa で吐出量0.47,1.44(L/分),平均粒径377,347μm で あった。脳組織を塗布した洗浄実験でも,ほぼ検出限界 (湿重量比0.01%)以下まで除去し得た。豚枝肉を用い て部位による洗浄効果の差異や可食部への物理的影響に ついて検討を行ったところ,良好な結果を得た。

高精細枝肉横断面画像を利用した肉牛の個体管理ならびに生産性向上に関する研究

 格付記録は育種改良の現場で広く利用されている。こ れまでの生産者への情報の還元は格付記録等のテキスト 情報が主体であり,明確な判断材料と成りうる視覚的な 情報の公開は一般的に行われていない。われわれが新た に開発した薄型撮影装置を用いることで,第6-7肋骨間 の切開幅が20cm 程度であれば,精細な枝肉断面画像の 撮影が可能となった。そこで,本研究では,一般市場で 撮影された断面画像ならびにその付加情報をデータベー ス化し,インターネット上で個々の肥育農家単位で検索・ 閲覧できる「枝肉情報のフィードバックシステム」を構 築することを目的とした。
  データは,本研究に協力いただいた肥育農家が出荷し た黒毛和種の第6-7肋骨間の断面画像と,その血統記 録,セリ単価および格付記録である。データベースの作 成にはPostgreSQL を使用し,フィードバックシステム は,HTML およびPHP4 を使用して構築した。
  本システムの構築により,限定された範囲ではあるが, 個々の肥育農家において,インターネット上の簡単な操 作で,視覚的な情報と付加情報を検索・閲覧することが 可能となった。本システムを利用することにより,肥育 技術の見直しや素牛導入の参考となる情報を肥育農家へ 直接,フィードバックすることできるため,本システム は効率的な育種改良や肥育技術の向上の一助となると推 察される。また,画像解析技術は,脂肪交雑の詳細な形 状を数値化することを特意図するため,これまでに増し て,詳細な脂肪交雑の育種改良を実現する手段となりう る。

畜肉副生物の機能性評価

 家畜から畜肉を採取した後に,動脈(AT),アキレ ス腱(AC)等が副産物として出てくるが,ほとんど有 効利用されずに廃棄物として処理されている。大豆やそ ば,絹等のある種のタンパク質はカゼインと比較し血中 脂質の低下作用があったことが報告されている。今回, AT およびAC の高付加価値化を目的に,これらの素材 が脂質代謝に与える影響を評価した。
  飼料は20% のカゼインを含むAIN 93G を基準食として,その基準食に5% の加熱処理により脱脂したAT およ びAC を添加してそれぞれ用いた。各飼料は5週齢の Wistar ラットに与え,4週間飼育した。
  摂食量,体重増加量,肝臓と盲腸の重量に関しては, 群間に差は見られなかった。試験食投与後1週目以降4 週目まで,AT,AC の両群で対照群と比較して血中の 中性脂肪濃度が低値となり,肝臓中の脂肪酸合成酵素お よびその転写調節因子であるSREBP-1c のmRNA レベ ルは低かった。また,血中コレステロール濃度は2週目 以降,AT 群で対照よりも低く,コレステロール合成の 律速酵素である肝臓中のHMG-CoA リダクターゼの mRNA 発現量も有意に低下したことから,AT やAC の摂取は肝臓における脂質代謝関連酵素の遺伝子発現を 調節することにより血中の脂質を改善したと考えられる。 以上のことから,加熱処理したAT およびAC は血中 脂質改善に寄与する食材となりうることが示唆された。

発表論文

著者名
論文タイトル
掲載雑誌
ページ
発行年
Liyanage Ruvini, Naoto Hashimoto, Kyu-Ho Han, Teppei Kajiura, Shoko Watanabe, Ken-ichiro Shimada, Mitsuo Sekikawa, Kiyoshi Ohba, and Michihiro Fukushima. Some Bovine proteins behave as dietary fibres and reduce serum lipids in rats.
British Journal of Nutrition in press   2007
佐藤禎稔,関川三男,松田清明,日高 智,島田謙一郎,福島道広 枝肉自動洗浄機開発のためのノズル選定とその洗浄特性 農業機械学会 印刷中   2007
Ohba K., Livera R.C.J., Seneviratne R.W., Serjmyadag D., Shimada K.,Fukushima M., Han K.H., Lee C.H. and Sekikawa M Optimizatiom of processing conditions for the production of cooked pork sausage as a ready-to-serve product Korean J. Food Sci Animal Resources 26 15ー19 2006
口田圭吾・大澤剛史・堀 武司・小高仁重・丸山 新 画像解析による牛枝肉横断面の評価とその遺伝 動物遺伝育種研究 34 67ー74 2006
口田圭吾・高橋健一郎・長谷川未央・堀 武司・本間稔規・波 通隆・小高仁重 高解像度デジタルカメラを利用した新しい牛枝肉横断面撮影装置の開発 肉用牛研究会報 80 56ー62 2005
特定危険部位除去用枝肉洗浄装置の外観
図1
図2
洗浄ノズルの交換機能、圧力・時間の調整機能、上下の噴霧順位調節機能および洗浄汚水の跳ね上がり防止機能により高精度な枝肉洗浄が可能
ミラー型牛枝肉横断面撮影装置ならびに得られる高精細デジタル画像
図3
図4

脂肪交雑形状の詳細な解析が可能
食肉処理場において大量の高精細枝肉横断面画像の収集が可能
しもふりのあらさや細かさなど従来評価できなかった形質を数値化できる
ミラー型牛枝肉横断面撮影装置ならびに得られる高精細デジタル画像
図5
食肉処理場において大量の高精細枝肉横断面画像の収集が可能
しもふりのあらさや細かさなど従来評価できなかった形質を数値化できる