ウイルス性感染症の予防・診断法に関する研究

 

研究室 獣医公衆衛生学分野
Lab for Veterinary Public Health
事業推進担当者 宮澤 孝幸(Takayuki Miyazawa)
異動先(異動先ポジション) 国立大学法人京都大学・ウイルス研究所(助教授)

 

研究要旨

 人に後天性免疫不全症(AIDS)を引き起こすヒト免 疫不全ウイルス(HIV)は,猿のレンチウイルスである サル免疫不全ウイルス(SIV)が人に感染して,世界中 に広まったと考えられている。今後,動物由来のレトロ ウイルスが人類に感染する可能性があるので,動物保有 のレトロウイルスの感染・増殖メカニズムを解析した。 また,動物のクローン技術の発達により,家畜に有用蛋 白を作らせることが可能となり,遺伝子改変動物の臓器 や細胞の人への移植や人の再生臓器の動物での作出も可 能になってきた。遺伝子改変動物では豚が一番可能性が 高い。その実現には,遺伝子改変豚由来の感染症の制御 が必要であるが,豚は人に感染するブタ内在性レトロウ イルス(PERV)をもっており,現在の技術でそれを取 り去ることは不可能である。そこでPERV の感染をモニ ターするシステムや,PERV を産生しにくい豚の開発を 目指すこととした。

動物由来レンチウイルスの 感染機構の解明

 猫に感染するレンチウイルスであるネコ免疫不全ウイ ルス(FIV)は,感染個体にAIDS を引き起こす。FIV の感染には,HIV と同様にケモカインレセプターであ るCXCR4をコレセプターとして必要とするが,CXCR4 だけではFIV は感染しない。FIV のプライマリーレセ プターのクローニングを,新たに開発した方法(1,10) で 試みたところ,CD134(OX40)分子がクローニングされ, その後の解析により,同分子が確かにFIV のプライマ リーレセプターであることが証明された(9)。FIV は, コレセプターとして人のCXCR4を使用できたが,人の CD134分子をプライマリーレセプターとして使用できな かった。このことから,FIV の宿主域を規定している ものは,プライマリーレセプターであることがわかった。 また,新しい宿主動物にレンチウイルスが感染するとき には,コレセプターのみを利用している可能性が示唆さ れた(図1)。

遺伝子改変動物由来感染症対策

 人に感染するおそれのあるPERV は,使用するウイ ルスレセプターの違いにより,A,B およびC の3つの サブグループに分けられている。我々はまず,遺伝子改 変動物由来のレトロウイルスが,より人に感染しやすく なっていることを証明した。次いで,ロンドン大学など との共同研究により,PERV-A のレセプターのクロー ニングに成功した。さらに,PERV の可溶性エンベロー プタンパク質(Env)を用いて,PERV Env の細胞結合 性を詳細に検討した。また大阪大学との共同研究により, RNA 干渉を利用して,PERV の産生を抑える方法も確 立した。

発表論文

著者名
論文タイトル
掲載雑誌
ページ
発行年
Hazama, K., Miyagawa, S., Yamamoto, A., Kubo, T., Miyazawa, T., Tomonaga, K., Watanabe, R., Okumura, M., Matsuda, H., and Shirakura, R.
The Effect of Expression of Complement Regulatory Protein on Pig Endothelial Cells to Pig Endogenous Retrovirus (PERV) lyses by human sera.
Transplant Proc. 37 503-505 2005
Nagashima, N., Hisasue, M., Nishigaki, K., Miyazawa, T., Kano, R., and Hasegawa, A. In vitro selective suppression of feline myeloid colony formation is attributable to molecularly cloned strain of feline leukemia virus with unique long terminal repeat. Res. Vet. Sci. 78 151-154 2005
Phung, T. T. Hang, Tohya, Y., Miyazawa, T., and Akashi, H. Characterization of Env antigenicity of feline foamy virus (FeFV) using FeFV-infected cat sera and a monoclonal antibody. Vet. Microbiol. Vet. Microbiol. 106 201-207 2005
Miyagawa, S., Nakatsu, S., Nakagawa, T., Kondo, A., Matsunami, K., Hazama, K., Yamada, J., Tomonaga, K., Miyazawa, T., and Shirakura, R. Prevention of PERV infections in pig to human xenotransplantation by the RNA interference silences gene. J. Biochem. 137 503-508 2005
Watanabe, R., Miyazawa, T., and Matsuura, Y. Cell-binding properties of the envelope proteins of porcine endogenous retroviruses. Microbes Infect. 7 658-665 2005
動物由来のレンチウイルスの感染様式
図1