原虫病の免疫病理学的研究

 

研究室 家畜生理学分野
Lab for Veterniary Physiology
事業推進担当者 齊藤 篤志(Atsushi Saito)
小俣 吉孝(Yoshitaka Omata)
異動先(異動先ポジション) 齊藤篤志,帯広畜産大学原虫病センター (特任教授)

 

研究要旨

   

 消化器粘膜は食べ物を介して感染する侵入門戸であり, 粘膜面での感染防御は感染予防を考える上で重要な意義 を持っている。Cryptosporidium parvum. 実験感染子牛 の末梢血中リンパ球における各種サイトカインmRNA 発現について経過観察を行ない,腸管粘膜微絨毛に限局 した寄生状態においてもtype1免疫応答が誘起され,感 染防御に関与する知見を得た。また一方,Eimeria stiedai 感染実験系を構築し,粘膜免疫が感染防御に有 効な手段となる可能性を見出した。一方,N. caninum 実験感染マウスにおける胎盤感染系を構築し,type1 / type2免疫応答を比較検討したところ,妊娠中感染マウ スでは免疫獲得能が低下しており,再感染時にtype2免 疫応答が優位である知見を得た。   

   

消化器系に寄生する原虫感染に おける粘膜免疫に関する研究

 消化器粘膜は食べ物を介して感染する侵入門戸であり, 粘膜面での感染防御は感染予防を考える上で重要な意義 を持っている。私共は人獣共通感染疾患の一つ,Cryptosporidium parvum. 感染に関する病態生理ならびに感 染防御機構を検討すべく,実験感染子牛の末梢血中リン パ球における各種サイトカインmRNA 発現について経 過観察を行なった。実験感染子牛は,発症に伴いtype1 サイトカインのひとつであるInterferon-γmRNA を発 現し,臨床症状の回復に伴い増加した。対照的に, type2サイトカインのひとつであるIL-4, およびIL-6の発 現は認められなかった。これらのことから腸管粘膜微絨 毛に限局した寄生状態においてもtype1免疫応答が誘起 され,感染防御に関与することが示唆された。また一方, ウサギの胆管に寄生するコクシジウム・Eimeria stiedai の感染実験系を確立し,虫体が可溶性分泌抗原を産生す ることを発見し,同抗原に対する粘膜免疫機構と感染に 果たす役割について検討を行った。虫体可溶性分泌抗原 をコレラ毒素a サブユニットによりウサギに鼻粘膜免疫 を施し,同抗原に対する抗体産生を確認後,Eimeria stiedai を接種し,病態生理学的変化ならびに感染抵抗 性を検討した。同抗原免疫ウサギは未免疫群に比較し, 有意に感染抵抗性を示したことから,粘膜免疫が感染防 御に有効な手段となる可能性が示唆された。

Neospora caninum の 胎盤感染機序に関する研究

 細胞内寄生原虫のひとつであるN. caninum は家畜で 胎盤感染や流産を起す。私共はヒツジから分離したN. caninum 虫体を接種したBALB/c マウスのうち,妊娠 中に接種が施された群では比較的高率に胎盤感染し,出 産後4週間以上経過後再妊娠した場合も比較的高率に胎 盤感染が起こることを見出した(4)。そこで,妊娠中感 染マウス,ならびに妊娠中感染後出産を経て再度妊娠し たマウスのtype1/type2 免疫応答を比較検討したところ, 妊娠中感染マウスでは免疫獲得能が低下しており,再感 染時にtype2免疫応答が優位であることが示唆され,こ れらのことと胎盤感染発症との関連性が推察された。

Neospora caninum 感染マウスにおける遅延型過敏反応測定の試み

 Neospora caninum 感染では細胞性免疫が防御的役割 を果たしており,胎盤感染機構にも関連性が示唆されて いる。しかしながら,感染動物では血中インターフェロ ンγなどサイトカイン濃度の変化はほとんど検出され ず,細胞性免疫の動態を知る上でその簡便な測定法の開 発が求められている。本研究では,細胞性免疫の動態を 測定する簡便な方法として遅延型過敏反応に着目し,マ ウス足蹠にN. caninumm 虫体抗原を皮内接種したとこ ろ,感染マウスでは抗原接種部位に接種後72時間まで特 異的な腫脹が観察された。抗CD4 抗体投与マウスでは 腫脹の発現は抑制されたことから虫体抗原の接種による 腫脹にはCD4 陽性細胞の関与が示唆され,虫体抗原に よるマウス足蹠試験が細胞性免疫獲得を知る指標として 応用できると推察された。

発表論文

著者名
論文タイトル
掲載雑誌
ページ
発行年
Takeda K., Omata Y., Koyama T., Ohtani M., Kobayashi Y., Furuoka H., Matsui T., Maeda R., and Saito A. Increase of Th1 type cytokine mRNA expression in peripheral blood lymphocytes of calves experimentally infected with Cryptosporidium parvum. Vet. Parasitol. 113 327-331 2003
Hanada S., Omata Y.,Umemoto Y., Kobayashi Y., Furuoka H., Matsui T., Maeda R., and Saito A. Relationship between liver disorders and protection against Eimeria stiedai infection in rabbits immunized with soluble antigens from the bile of infected rabbits Vet. Parasitol. 111 261-266 2003
Hanada S., Umemoto Y., Omata Y., Koyama T., Nishiyama K., Kobayashi Y., Furuoka H., Matsui T., Maeda R., and Saito A. Eimeria stiedai merozoite 49-kDa soluble antigen induces protection against infection. J. Parasitol. 89 613-617 2004
Omata Y., Nidaira M., Kano R., Kobayashi Y., Koyama T., Furuoka H., Maeda R., Matsui T., and Saito A . Vertical transmission of Neospora caninum in BALB/c mice in both acute and chronic infection. Vet. Parasitol. 121 323-328 2004
Kano R., Masukata Y., Omata Y., Kobayashi Y., Maeda R., and Saito6. Omata Y., Kano R., Masukata Y., Kobayashi Y., Igarashi M., Maeda R., and Saito A. Relationship between type 1/type 2 immune responses and occurrence of vertical transmission in BALB/c mice infected with Neospora caninum. Vet. Parasitol. 129 159-164 2005
ウシのCryptosporidium parvum 感染
図1
図2
図3
図4
粘膜免疫ウサギ(3)と対照ウサギ(1)のEimeria stiedai
接種後30日目の肝臓
図5
図6