拠点リーダーあいさつ

動物性蛋白質資源の生産向上と食の安全確保
-特に原虫病研究を中心として-

 研究プロジェクトリーダー 五十嵐 郁 男

平成14年度「21世紀COEプログラム」研究教育拠点に帯広畜産大学原虫病研究センターを中核施設として全学を挙げて申請した「動物性蛋白質資源の生産向上と食の安全確保-特に原虫病研究を中心として-」が選定されました。

本研究プロジェクトが選定されましたことは、研究拠点の大小にとらわれず,これまでの原虫病研究センターをはじめとする本学の研究成果や国際協力ならびにBSE,病原性大腸菌O157など人畜共通感染症に関する特色ある研究実績が評価されたものと推察しております。また,「動物食品の安全監視」のために,獣医畜産領域における環太平洋地域No.1の研究組織から世界「トップ5」に入る国際的人畜共通感染症専門研究特化組織として社会不安解消に学術的に貢献するという本学の将来構想も評価されたものと考えております。

原虫病は,患者が毎年2~3億人,死者100~200万人に達するとされるマラリアを代表として特に開発途上国で問題となっている感染症であります。また,世界の牛の80%が感染の危険にされているバベシア病や,アフリカの東部では1頭/分の割合で死亡するとされるタイレリア病(東沿岸熱),アフリカにおいて1億5千万頭が感染の危険性を有し,ツエツエバエが媒介するトリパノソーマ病など動物の原虫病により,甚大な経済的被害が引き起こされ,また開発途上国での動物性蛋白質資源の低い生産性の大きな要因ともなっています。しかしながら,細菌に効果のある抗生物質は原虫病には対してほとんどが無効であり,また予防効果のあるワクチンの開発も進んでいません。したがって,原虫病の制圧は開発途上国,ひいては先進国の安全な動物性蛋白質資源確保に必須な重要研究課題であります。本プロジェクトでは,原虫のゲノム解析,原虫の宿主への寄生機構の解明,原虫を媒介するベクターの制圧により,これまでにない新しい自殺型原虫ワクチン,原虫耐病性家畜の開発,診断法,薬剤の開発を促進することを目的としています。

また,世界市場の自由化により人や食料の国際的移動が増加し,その結果,原虫病や人畜共通感染症が世界規模で移動・拡散する危険性が増大しています。特に我が国では食糧の60%を海外から輸入しており,食の安全と安心の確保が国民の極めて大きな関心事となっていることから,食品由来の感染症特にBSEの早期診断技術の確立・治療法の検討,病原性大腸菌O157および炭疽菌の診断・治療法の開発,動物性蛋白資源の供給源である家畜の安全性を担保する飼育方法や食肉の安全な流通を確保するためのフードシステムの構築も本プロジェクトの重要な研究課題となっています。これらの研究を推進する上では,海外の情報収集,海外の研究者との情報交換や協力体制の確立など,国際協力や人材育成がさらに重要となることが予想されます。

本プロジェクトは以上述べたような研究の背景・目的をもってスタートし,実質的に約1年半が経過しました。研究概要とこれまでの研究成果をまとめましたのでご案内申し上げます。そして本プロジェクトが今後順調に展開し,環太平洋地域No.1の研究組織から世界の研究拠点に発展するよう,皆様のご批評・ご協力を賜りますよう,心よりお願い申し上げます。