食肉,乳・乳製品の生産・流通における衛生情報管理システムの開発食肉流通における衛生情報管理システムの構築

代表研究者:関川三男
共同研究者:口田圭吾,福島道広,小嶋道之,三上正幸

研究課題の背景・目的

 農林水産省によ り牛の個体識別システムがスタートした。このシステムは,「伝染性疾病発生時の迅速な個体追跡を可能とすること」や,「生産物についての生産情報の提供の ための追跡基盤を整備すること」を目的として構築され,これにより不測の事態が発生した際に,従前にもまして原因を特定することが容易になると考えられ る。しかし,その構築目的の中に,「個体識別番号を鍵として個体情報の統合を可能とし,経営の高度化に資する」ことや,「改良の精度を向上させること」と うたわれていながら,肉用牛の改良において必要不可欠な日本食肉格付協会による格付結果や,父方の血統記録などがデータベース化されていないなど,日常の 生産活動にとって有効に機能し得ない危惧も指摘されている。そこで,牛個体ごとに得られた情報を,その枝肉の横断面画像とともにデータベース化し,消費者 ならびに生産者へ還元するシステムを開発すること,および,これらの情報を肉牛の育種改良へ応用する方策について検討する。また,流通段階で食肉の安全性 を確保するための家畜の生産履歴に関しては,安全志向の高まりとともに各方面から注目されるようになってきた。本研究では,従来の安全性確保の取り組みに 加え,肉用牛個体の健康度について肝細胞ならびに血液性状などを中心に調査し,家畜健康度の指標を開発するとともに,画像解析から得られる種々の特徴量と 家畜健康度との関連性を検討し,迅速かつ安価な検査法の確立を目指す。

研究課題の概要

1.食肉流通における衛生情報管理システムの構築については,関係機関との連携をとり,衛生情報ならびに育種改良に関わる情報の蓄積ならびにデータベースの構築をすすめる。

1)個体識別番号をキーとした枝肉画像を含めた各種情報のデータベース化

2)データベースを利用した個体追跡システムの構築

3)データベースを利用した視覚的改良シミュレーションシステムの構築

4)セキュリティーを確保した上でのインターネットを利用したデータベースの公開

2.食肉の安全性を担保する肝細胞及び血液等による診断マーカーの検討と,これらの値と脂肪交雑や筋肉色,脂肪色などに関する画像解析値との関連性を検討する。

1)食肉の安全性に関わる診断マーカーの迅速かつ安価な検査法の検討

2)健康度を新たな情報とした地域内産牛肉の高付加価値化に関する検討

3)食肉を汚染する物質の検出と防御に関する検討

得られた成果

 これまでに開発 してきた牛枝肉横断面撮影装置を用い,各地の枝肉市場や肉用牛の能力検定における枝肉横断面画像を採取し,枝肉横断面画像のみならず生産履歴,血統情報, 格付結果とともにデータベース化した。構築されたデータベースは,個人情報の漏洩に留意しつつ,インターネットを介して利用できるよう検討を進めた。な お,開発した個体識別追跡用データベースのモデル画面を下記に示した。現時点では,肉用牛の改良に資するよう脂肪交雑やロース芯の形状などを細分化して評 価し,それら情報を有効利用することで,両親の育種価から,その子供において期待される枝肉を視覚的にシミュレートできるよう設計した。コンピュータモニ タに表示される画像情報を統一するための手段についても検討した。

 食肉の安全性を 担保する肝細胞及び血液による診断マーカーと脂肪交雑や筋肉色,脂肪色などに関する画像解析値との関連性を検討した。現在,ホルスタイン40頭,黒毛和種 20頭の屠畜時の血液および肝臓の生化学的分析を実施し,結果を解析中である。肝疾患の有無と肉質,血液中カル二チン量と脂肪交雑度および牛肉保水性との 間に有意な相関係数が認められるなどの興味ある知見を得ており,これらの総合的な統計解析に取り組んでいる。また,枝肉に付着,あるいは食肉加工製品に混 在する中枢神経組織の検出方法をほぼ確立し,この方法で市販加工製品等の調査を行ない,汚染状況が低いことを推定している(北海道畜産学会,口頭発表, 2003年9月)。さらに枝肉に付着した脊髄組織の効果的な洗浄液および洗浄方法の検討を行い,実験室段階では,有機酸,特に乳酸の洗浄効果が高いことを 示唆する結果が得られており,早急に現場レベルでの検討を行なう。

今後の展望

 肉用牛の記録に は,様々な所有権が存在し,それぞれの合意が得られなければインターネットでの公開は難しい。しかし,今後,それらが調整できればグループ内あるいは地域 内からの情報発信に繋がり,生産された牛肉の安全・安心に関して付加価値を高めることが可能となる。さらに,肉質に関して脂肪交雑などの特性を画像解析に よる客観的な数値で詳細に表示することが可能となるばかりではなく,これらの数値を基礎とした新たな育種改良法へとつながるものと期待される。さらに,現 在,一般に求められている「食肉の安全と安心」あるいは食肉の食味「おいしさ」とは別の視点から,新たな肝細胞および血液による診断マーカー等を検討して いるが,これらと画像解析値との関連性が明らかとなれば,健康度を迅速かつ安価に評価することができ,新たな付加価値として地域内産の牛肉の価値を高める ことも可能となる。さらに,個々の牛肉が得られた牛の生体時の情報や,屠畜解体工程で危惧される食肉への中枢神経組織汚染や微生物汚染の点検結果や防御記 録等の情報を整理検討して開示することは,食肉に関連する産業界ばかりではなく消費者にとっても福音となることが期待される。

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Construction of a hygiene information management system for beef production and consumption

The objectives of this research were as follows: to construct a database with information on each cow that would include the condition of health, cross-sectional imagery of carcasses, grading records, and pedigree information; to make this information available to consumers and farmers; and to apply it for improving the breeding of beef cattle.

The construction of a system to manage information about hygiene will have additional benefits related to beef safety in local communities with limited production. It will also lead to a new method of breeding for improving meat quality based on a detailed evaluation of the images.

The presence of tissues from the central nervous system (TCNS) in beef and beef products is unacceptable. Therefore, a specific method is needed to ascertain that no tissue from the TCNS is present in meat and carcasses. A procedure to detect TCNS involving immunochemical detection of glial fibrillary acidic protein (GFAP) was used to confirm the presence or absence of TCNS in meat and examine the extent to which various cleaning reagents removed TCNS from carcass surfaces. All samples, carcasses (pig, cow, deer), commercial beef and pork, meat processing products, and by-products (liver, heart) analyzed in this study were negative for GFAP, except for the meat surfaces from the necks of deer and pig carcasses. An effective washing method to remove the TCNS was then examined. Lactic acid was the most effective, although it caused deterioration in the color of the meat. Washing with lactic acid produced by fermentation was examined, and the relationship of its use to the quality of meat was investigated. We believe that it is important to publicize all information related to beef and beef products.